おねがい
京都校との交流会を控えた9月。悟先生は交流会直前まで海外出張に行くらしい。大変だ。
「あ、そうだ真実。ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「最近憂太と連絡取ってる?」
「特に取ってないですけど」
悟先生が高専を出発する少し前、廊下でばったり出くわした……ではなく、おそらく待っていた先生に突然そんな話をされた。
「そっか。連絡先は知ってるよね?」
「はい。出張先で憂太にも同じお願いする気ですか?」
「相変わらず察しが良いねぇ」
悟先生はいつもの軽い口調でそう言ったが、珍しく真面目な表情を見せた。
「今後僕に何かあったら憂太と協力してほしいんだよね。今の1、2年のことを君たちに任せたい。特に1年の虎杖悠仁」
「イタドリ? って、死んだって聞きましたよ。伏黒くんたちに」
「あっ」
「えっ」
どうやら口を滑らせたらしい。
「実は生きてんだよね。ナイショにしといてくんない? お土産あげるからさ」
「まあいいですけど……あ、もしかして虎杖くんって最近七海さんと任務行ってました?」
「行ってたけど、何で知ってんの?」
「たまたま見かけたんですよ。任務で神奈川行ったときに七海さんが学生連れてたから、見覚えない人だったしあれが虎杖くんなのかなって。赤いフードの」
「そう、それそれ」
「それで、先生に"何か"あるんですか?」
10/31に渋谷で悟先生を封印するという夏油さんの計画は聞いているけど、まさか本人が知っているはずもないだろう。
「な〜んか、嫌な予感がしてね」
第六感がすごすぎる。
*****
そんなこんなで、交流会後からちょくちょく憂太と連絡を取っていた。
といってもほとんど雑談で、憂太はときどき海外の写真を送ってくれる。私は虎杖くんについての情報を送っていた。モノマネが得意とか映画好きとか。
憂太には悟先生が封印されたと虎杖くんに聞いた時点で連絡していた。
海外から戻って来るにはそれなりに時間がかかったけど、虎杖くんと脹相さんに同行する直前に、虎杖くんが死刑になったことと憂太が執行人になったことなど詳しい情報を貰っていた。
私も死刑対象になってるものだと思っていたけど、"呪霊に唆されて騙されていた"というなんともカワイソウな感じで収めてくれていたらしく、高専に戻ることは可能みたいだった。
とはいえ今は虎杖くんと一緒にいるように憂太から言われていたから、結局2人に同行することは実は最初から決まっていたのである。
……私は全部知っているから、落ち着いて対処できると思っていたんだけど、
「誰が、虎杖くんの、何?」
憂太は演技力も特級だった。何あれ怖すぎる。