七海と出られない部屋 /前編
目が覚めると、また"あの"白い部屋にいた。
見覚えのあるベッドから起き上がると、横にはいたのは七海さん。
「わぁ、七海さんだ」
「なんですかその反応は」
眉間にしわを寄せすぎてもうなんだかわからない表情になってる七海さんは、案の定一枚の紙を持っている。
「もしかして"出られない部屋"ですか?」
「……この部屋のこと、何か知ってるんですか?」
「まあ、はい。前にも入れられたことがあって、結局何で入れられたのかもわからなかったんですけど」
「ハァ………………」
七海さんはめちゃくちゃ長い溜息を吐いた。
「深山さん、その以前入れられた部屋というのはどういったものでしたか」
「セックスしないと出られない部屋でした」
「…………」
顔がすっごい怒ってる。それに持ってる紙が拳の中で小さく圧縮されている。
「七海さん、その紙、何て書いてありました?」
「同じです」
「あー……なるほど。あっはは!」
大人オブ大人かつキングオブ真面目の七海さんが相手では、悟先生のようにさくっとヤッて〜なんて展開にはならないだろう。どうしよう。
「何笑ってるんです、困るのはあなたでしょう」
「え?」
「あなたが起きる前に術式を使って部屋を破壊しようしましたが不可能でしたそうなるとここから脱出するためにはこの紙の指示通り性行為をする他ありませんしかしそれで出られるという確証もなくもし行為中に攻撃などをされれば対処が遅れるのは確実ですそれにそもそも私のような特別な感情を持たない相手とそのような行為に至るのは一般的には褒められたことではありませんし重ねて私は社会人であなたは学生未成年ですから――」
すごい。ノーブレスだ。
七海さんの正論を聞き流していると、それに気づいたのか溜息とともに言葉が途切れる。
「ところで深山さん。答えたくなければ構いませんが……以前入れられたとき、他には誰がいましたか」
「え? ああ、悟先生でした」
「よりにもよって……」
「あのー……私は全然大丈夫ですよ? 経験豊富ではないですけど、ゼロじゃないし。悟先生ともさっさとこなして出よ〜って感じで――」
「…………」
あ〜、やばい、怒らせてしまった。魂が震度7レベルでゆらいでる。悟先生のことは言わない方がよかったかも。
「いや、あの、ほら、やらないことには出られないし、前もそれで無事出られたので、今回も――」
「もういいです。わかりました」
七海さんはサングラスをはずし、ベッドサイドにあったテーブルに置いた。
……よく考えたら、私が良くても七海さんが良くない可能性があるよね。恋人がいるかもしれないし。
「あ、あの、七海さん、すみませんでした……」
「何故あなたが謝るんです」
「いや、私は良くても七海さんが嫌かなと思って。そこまで考えが回ってなかったです」
「……いえ、私こそ、他に手段がないとわかっていながら深山さんの提案を無碍にしていました。謝るなら私の方です、すみません。それから、私は別に嫌だとまでは思っていません。むしろ逆だと思っていたので驚いただけです」
「あはは、ならいいんですけど。なんていうか、そのへん私はあんまり一般的な感覚を持っていないみたいで」
「ええ、そうでしょうね。ですが、この状況ではありがたい」
「そうですね。じゃあ、さっさとヤッて外に――」
「そういうことは堂々と言わないように」
「……すみません……」