打ち解けた?
なんやかんやで連れてこられたのは薄暗いトンネルだった。
ここまでずっと担がれたままなのはもう諦めている。楽でいいや。
真人さんは一度立ち止まると、上に吊るされているハンモックに向かって飛び上がる。意外なほど軽やかに着地したようで衝撃は少なかった。器用だ。
っていうかこのハンモック絶対1人用でしょ、狭いよ。
来る途中でいろんなことを質問されて、と言ってもたいしたことは聞かれなかったけど、なんかもう友達気分だった。まずいって私、これ高専裏切ったことにならない? でも話自体は新鮮で面白かった。
見たところ真人さんは機嫌良さそうだし、下手に抵抗したところで無駄だろうし、やっぱり穏便に解放されるのを待ちたいところだ。
私がぐるぐる無駄なことを考えていると、真人さんはいつの間にかハンモックに横になっていて、私はそれをまたぐように上に乗せられた。待ってくれ、何この状況。
しかもさっきからずっとこっちを見てくる。めちゃくちゃ見てくる。
「…………」
「…………」
意味わかんないし、気まずいし、何よりなんだか恥ずかしい。
「……ぷふっ」
「あっ、ちょ、何笑ってんですか!」
「百面相してるのが面白くてね」
「異性に見つめられるのは慣れてないので」
「異性? 真実は俺を呪霊じゃなくて異性だと思ってるんだ」
「いや、呪霊ですけど……でもどっちかっていうと男っぽいし。えっ、女なんですか?」
「気になるなら確かめてみなよ」
そう言った真人さんは私を乗せていた腰をぐいっと突き上げてきて、体勢を崩される。
「うわっ、あぶな! 落ちるでしょ!」
「君って、結構愉快だよね」
キョトンとした表情をした真人さんだったが、また思案顔に戻った。気分屋なのか?
「それで、話を戻すけど」
「はあ、この体勢のままですか」
「じゃあこうしようか」
真人さんに腕を引っ張られてそのままべしゃりと顔面から倒れこんだ。痛い。硬い。
顔を上げると当然ながら間近に真人さんの顔がある。さっきより気まずくなって、見なかったことにするため目を逸らした。
「ふふっ。……真実はさ、魂の形を知覚できるの?」
何で最初ちょっと笑ったのかわかんないけどこの際それはいい。
それさっき聞かれなかったっけ、と思ったけど、それを忘れるほど真人さんは馬鹿ではなさそうだ。
「いえ、できないと思います。っていうか、今まで魂ってのを意識したことがないんですけど……」
「俺はね、人の魂が見えるんだ。その魂に触れて形を変える――"無為転変"、それが俺の術式」
え、えぇ……噓でしょ呪霊と術式かぶるとか。
「呪術師は呪力で体を守るけど、魂までは守れない。何故なら知覚できないからね、守りようがないんだ。でも君はそれが完璧にできている。どうして?」
「わかんないですよ、魂の形とか、私には見えませんし……。あの、私もちょっと気になることがあるんですけど」
「何?」
「真人さんに試させてください、私の術式」
「うーん、内容次第かな」
「ですよねー」
そりゃそうだ。でも一度湧いた好奇心は満たすまで引けない性分なので、なんとか了承してもらわないと帰るに帰れない。
「私の術式、"有為転変"っていうんです。魂に触れてってわけじゃないですけど、"核"みたいなものに触れて呪霊を変形したり。小さくしたのとかは持ち運べて、式神みたいな感じで使えるんです」
私は制服のポケットからいくつか小型化した呪霊の塊を出して見せた。ぱっと見はほぼ棒状の炭である。
「俺と一緒だ」
「やっぱり、そうですよね。って口から出すんですか!?」
絵面が怖すぎる。けど、真人さんが出したのは小型化した人間らしい。こう言っちゃ悪いけどグロいな。
しかしこれには真人さんも驚いたみたいで、と思ったら何やらニコニコ笑っている。
「真実、呪術師やめて俺たちにつきなよ。多分こっちの方が向いてるよ?」
「え、いやそういうわけには――じゃなくて、先に術式!」
「ん? ああ、いいよ。やってみて」
何で急に歓迎ムードなんだ。というか多分私の術式は真人さんに効かないと思うけど、まあ気になるものは気になる。
つけていた手袋を外して真人さんに触れる。
いつも通りにやってみたけど、やっぱりそう上手くはいかなかった。"核"の形を変えたくても何かに守られてるっていうか、でも、あと少し――