教え子編 /前編
「五条先生、俺も一緒に行くからさ、自首しようぜ?」
任務のため五条により郊外の廃病院前に集められた1年生は、遅れて到着した五条を見て開口一番に自首を勧めた。
「なんで僕、いきなり自首勧められてんの?」
「おじちゃんここどこ? わたしおうちかえりたい」
「せめてお兄ちゃんにしてくんない?」
「あはは、悟全然信用されてないね。昔から言ってるじゃん、私の横歩くと不審者に間違えられるよって」
「ここ来るまでに2回職質されてるからシャレになんないんだよねソレ」
五条は小柄な女性を連れていた。その身長差は約40 cm。
「もー、みんなせっかちだな。紹介するよ」
気まずそうな表情の虎杖、イラつきが全面に出ている釘崎を前に平然としている五条はマイペースに言葉を続けた。伏黒は1人溜息を吐いている。
「こちら1年副担任の深山真実ちゃんでーす!」
「よろしくお願いします!」
「……は?」
虎杖と釘崎はポカンと口を開けて驚く。
「マジ? ……ですか?」
「マジです」
虎杖が真実に確認すると当然ながら頷かれ、釘崎も徐々に理解し始める。
「真実はパッと見中学生だけどちゃんと大人だからね。僕がいないときは真実に色々教えて貰いな」
「中学生は言い過ぎでしょ。高校生くらいにしてよ」
高校生ならいいのか……というツッコミは押しとどめ、2人は順に自己紹介を済ませた。
「深山先生、お久しぶりです。最近見なかったですけど、任務だったんですか?」
「うん、任務。でももう落ち着くよー。悟は忙しくなるけどね」
「僕の任務分けてあげようか?」
「いらない!」
「ん〜、相変わらず穢れのない笑顔!」
なんとなく似たノリの教師2人はニコニコ笑い合っている。
「伏黒知り合い?」
「ああ。俺はお前らより前に高専にいたからな」
「ありゃ世渡り上手タイプね。スピード出世してそうだわ」
「何の評価をしてんだよお前は……」
「おっ、よくわかったね野薔薇! 真実は高専入ったときは3級だったけど、在学中に1級になってるんだ。まあ僕はその頃すでに特級だったけど」
「うざ」
「恵、僕にだけ当たり強くない?」
「別にそんなことないです。っていうか早く行きましょうよ」
「ほら! 冷たい! ねえ真実、恵冷たくない!?」
「え? あー、うん。えっとー、あ、そうだ! 虎杖くんと釘崎さんはどんな感じで戦うの?」
途中から聞いていなかった真実は露骨に話を逸らした。
「俺はまあ、殴る蹴る?」
「私は芻霊呪法です」
女性だし一応まともそうだと判断された真実に釘崎は敬語を使った。それも加味されて五条はしくしくを泣きまねを始めるも、誰もツッコまないまま置いて行かれるのであった。
*****
「深山先生って、アイツの後輩なんですか?」
「悟? ううん、同級生だよ」
「えっ、アレと同い年!? にしては……先生、美容で気遣ってることとかあります?」
「美容かあ、うーん、無難だけどメイクはちゃんと落とすとか、スキンケアサボらないとか?」
「くっ、生まれ持った素養か……! じゃあ、おすすめのコスメ教えてください!」
「おっ、いいね! そういうのしたことないから新鮮! 釘崎さんのおすすめも教えてね」
「よっしゃ! あ、あと苗字じゃよそよそしいし真実先生って呼んでもいいですか? 私も野薔薇でいいんで!」
「いいよー。それと敬語とかも使わなくていいよ、虎杖くんもね」
薄暗い廃病院の中でする話か? と思いつつ、ガールズトークに花を咲かせる釘崎と真実の後ろを歩く虎杖と伏黒。
「なんか、女子ってすげーな」
「……そうだな」
会って数分で打ち解けた2人を見て素直に感心していた。
*****
「そういえば今日の任務2級が2体って聞いてるけど、虎杖くんと野薔薇は何級?」
「俺そういうの言われてねえんだよなあ」
「私は3級。真実先生も高専入ったとき3級だったのよね?」
「そうだよ。入学してすぐは全然術式使いこなせてなかったからさ〜、後で4級にするか迷ってたって聞いたよ」
「真実先生の術式ってどんなの?」
「うーん、説明するの難しいんだけど、まあざっくり言うと"形を変える"って感じかな。せっかくだし今日は呪霊出てきたら使うね。――あ、これは先に見せとくか」
真実は腰に巻いていたウエストポーチから炭のような黒い棒を出した。
「これ形変えた呪霊なんだ。指示出すと索敵もできるんだよ。――2級呪霊探してきて」
真実が出した棒に触れるとそれは歪に変形し、塊のまま院内を浮遊して行く。
「おー!」
「伏黒のみたいな式神とは違うの?」
「うん、私のは任務先で適当に拾ってきた呪霊だから基本使い捨てだし。術式で中枢イジって言うこと聞かせてるだけだよ」
「よくわかんねえけど、すごいことはわかる!」
「あはは、まあ見た方が早いから詳細は後でねー」