術式編 /前編
【夏油視点】
「真実、それ、誰?」
「真人くん」
「……いや、誰?」
任務から帰ってきた真実は男を1人連れていた。顔にツギハギのある長髪の怪しい男だ。
"マヒトくん"と呼ばれたそいつは真実にべったりとくっついていて私のことなど眼中にないようだった。
「ええと、もしかして浮気かい?」
「え、違うよ。さっき取り込んだ呪霊だよ」
実家で実験台にされて私と同じ呪霊操術を使えるようになった真実が、見事に術式を使いこなしていることは知っている。取り込んだ呪霊を見せてもらったこともあるけど、人型の呪霊なんてそもそも誰も見たことがない。
というかそんなことより、高専内に呪霊を連れ込んでる時点でアラートが鳴りまくっている。私も学生時代に鳴らしたことがよくあるから慣れてしまっていたけど、今頃校舎内は騒ぎになっているだろう。
「ともかく、学長のところに行こうか」
そう言うと真実は大人しく着いてきた。
「それ、しまえないのかい?」
「真人くんができるだけ外に出たいって言うから」
「真実は良いにおいがするね」
「やめてくれるかな?」
相変わらず真実に後ろからくっついてきていた真人という呪霊をひきはがす。
「真実、こいつ誰?」
「夏油傑。特級呪術師だよ」
「ふーん。形変えていい?」
「いいわけないでしょ」
真人は文句を言いながらも真実に従った。
それにしても"形を変える"とはどういうことだ。
「あ、真人くん、私と同じ術式持ってるんだよ。それで話してたらなんか仲良くなっちゃってさ、隙見て取り込んだ」
初めて呪霊に同情したかもしれない。
真実がよくその手段で呪詛師なんかを殺しているのは聞いてたけど、本当に意気投合して仲良くなった相手でも"そう"なのか。
「だって真人くん特級だし、今は発生したてだったけど成長したら私より強くなっちゃうでしょ。取り込んだ呪霊の成長が止まる問題は有為転変でイジって解決したからオールオッケーだよ」
「真人はそれでオッケーなの?」
「まあそれはもういいよ」
「あ、そう……」
意外と話が通じるな。
「ちょっと何してんの君ら。アラート鳴ってるし、こっちはもう大混乱だよ」
「あ、悟。おつかれー」
ちょっと臨戦態勢に入っている悟がやってきた。
「真実の後ろのそれ、何?」
「呪霊だよ。さっき取り込んだの」
「しまえよ」
「外出たいって」
「傑、お前それでいいの?」
「いいわけないだろう」
悟が珍しくまともだ。
「真実、こいつは?」
「五条悟。傑と同じ特級呪術師だよ」
「ふーん」
「真人くんデカいけど生まれたてだから、2人とも優しくしてあげてね」
「「いや、それは無理」」
「えー!? 何で?」
「俺は別に真実がいれば何でもいいよ」
「あ、そうなの? 鍛えてもらおうと思ったのに」
「その分真実が教えてくれればいいんじゃない、色々と」
「ちょっと待て、そういうことなら私が鍛えてあげるよ」
取り込まれているとはいえ得体の知れない特級呪霊、しかも男に真実を独占されては気分が悪い。それにこいつはわかっていて見せつけるように真実に絡んでいる。
「えーいいよ別に。俺は真実のだし、真実も俺のだから」
「聞き捨てならないな」
*****
「悟、めんどくさそうだから学長のとこ先に行こ?」
「自分で撒いた種でしょ。ま、いいけど」
言い争いを続ける夏油と真人にバレないよう、五条の術式で学長のもとへトんだ。
学長室に着くと真実はげんこつをくらった。
「そういうことは先に言えと昔から言ってるだろう」
「はい……痛い……」
「プップ〜、28にもなってげんこつされてやんの〜」
「だから悟モテないんだよ」
「あ"ぁん? モテますけど!?」
「七海くんとか灰原くんの方が優良物件だよ」
「そこ傑じゃないんだ」
「? 傑は性格悪いもん。モテるけど」
「それ絶対傑に言うなよ」
「言わないよ? 傷つけちゃうし」
「……真実も大概性格悪いよね」
「心外だなぁ。配慮じゃん」
「何で性格悪い傑と付き合ってんの?」
「好きだからだけど」
「うっわぁ、鳥肌立った」
「形変えていい?」
「やだ」
「おっぱい触っていいよ」
「マジ? ってほら術式使うじゃん!」
「等価交換でしょ」
「何で真実のおっぱいと僕の魂が等価なの?」
「真人くん元気かな〜」
「え、無視?」