悪ノリ
真人さんとなんやかんやあった後、私は普通に高専に帰った。
連絡もないまましばらく戻らなかったため、伊地知さんにはめちゃくちゃ心配されてちょっと申し訳なかった。良い人すぎるよ伊地知さん。
連絡できなかったのは"呪霊を祓った後帰ろうとしたら貧血で倒れてしまった"ということにしておいたら、特に怪しまれることもなくみんなも心配してくれて、やっぱりちょっと申し訳なかった。
でも縛りがあるから話せないし、仕方ないよね〜と思ってしまうのは薄情か。
考えても仕方ないのでそれはさておき、今日も今日とてグラウンドで1年生たちと交流会に向けての特訓。
私は最近任務が立て込んでて1年生には初めて会ったばかりだったけど、釘崎さんはあまり人見知りしないタイプの子でよかった。ただ気が強い。初対面で"まあまあね"って言われた。負けちゃう。
伏黒くんは前からいたから知り合いだ。
ちなみにまだ顔も合わせていないのに1人亡くなってしまったらしい。任務での死亡は珍しいことではないけど、年下がっていうのは初めてだった。
1年生2人の様子を見るに、その亡くなった子というのは相当良い人だったんだろうなと思った。でなきゃ"強くならなきゃ"なんて顔はしないだろう。と勝手に思っている。
強くなって私の分まで活躍してほしい。私はもう任務以外のことで頭のキャパオーバーだから。
「高菜〜」
「真実ー、ちょっと付き合ってくれよ」
考え事をしながら組手してたら真希にボコられて、疲れたのでグラウンドの端でみんなを眺めていると、棘とパンダがやってきた。
この2人は悪友みたいな感じだ。どうせ今回も新入生をからかって遊ぼうとしているんだろう。まあノるけど。
2人から"計画"を聞いてみると、私は頭を抱えた。それ絶対釘崎さんガチギレするじゃん。
怒らせない方がいいぞ〜とは思うけど、私の好奇心は倫理観より優先順位が高かった。すまない釘崎さん、そして真希。
「でもそれ、私することないよね」
「いや、真実は恵の制服着てもらうから」
「うわ、パンダ、発想力すごいね」
「ツナ、こんぶ」
「え、似合うかな? 棘もスカート似合うと思うよ」
「おかか!」
チョップされた。褒めたのに。
さすがに釘崎さんのスカートはだめだろうということで、パンダは学ラン、棘は真希のスカート、私は伏黒くんのズボンを装備して教室に向かった。真希のスカートはいいのか。
*****
先に教室に入っていったパンダは案の定釘崎さんにボコられていた。容赦ないな。
うわ〜と思いつつ、棘に合図されて同時に教室に入る。
「高菜!」
「あっ、えっと、ツナマヨ!」
やべ、ポーズは合わせたけど決め台詞考えてなかった。とか思ってたら釘崎さんの鉄拳が棘の頭にめり込んだ。
そのまま釘崎さんは倒れてダイイングメッセージを書く棘からスカートを奪う。追いはぎのようだ。
「ハァ……何してんすかアンタまで」
「あ」
伏黒くんのズボンはきっぱなしだ。
「ごめんごめん、今返す。やっぱり男子の服はおっきいね、足長属だな伏黒くん」
「ちょっ、ここで脱がないで下さ――」
「オイ伏黒、何脱がしてんだお前」
地を這うような低音ボイス。釘崎さんはなぜか伏黒くんに怒っていた。
「大丈夫大丈夫、下に自分のはいてるから!」
「そういう問題じゃないのよ!」
「そういう問題じゃないの!?」
結局その場で脱いで無事伏黒くんにズボンを返すと、難しい顔で唸られた。
「真実さんちょっと来なさい。性教育の時間よ」
「えっ」
真希のスカートを持った釘崎さんは私の首根っこを掴んで歩き出す。
「五条がアンタのこと"ちょっと倫理観が足りない人格破綻者"って言ってたけど、ここまでとは思わなかったわ」
「毒舌だね。っていうか悟先生にだけは言われたくないなそれ」
「アレに言われるレベルってことでしょ。――あっ、真希さーん!」
「野薔薇、真実もいたのか。私のスカートがねえんだけど――って、お前が持ってたのかよ」
「男子がやらかした」
「アンタもでしょうが!」
「ぐえっごめんなさい」
釘崎さんにより事の顛末が真希に語られた。半分くらいただの暴言だったけど。やっぱ、男子の思いつきの悪ふざけって女子には評判悪いんだなってことが再確認できた。
「真実、お前またアイツらに乗せられたのかよ」
「はい。好奇心に負けました」
「そもそも戦ってねえだろ」
「真実さんマジ性教育受けた方がいいわよ」
「はい。今度悟先生に頼んでみます」
『そういうとこだよ』
真希と釘崎さんはハモった。
……そういや、結局釘崎さんのスカートはどこいったんだろう?