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湊が弓道部に入部して部員は9人となり、県大会予選に向けての練習が本格的に始まろうとしていた。
今日は練習前にトミー先生から重要な話があるらしく、皆が集められている。
「そろそろ県大会予選に向けての練習をしていきたいところじゃが、知っての通りわしは腰が悪くて弓が引けん。そこで、皆に指導をしてくれる専属コーチを呼ぶことにした」
トミー先生が扉の方に呼びかけると、"コーチ"が入ってくる。私服姿の長身の男性だった。
「まっーー」
驚きすぎてそれ以上声が出ず、おまけに持っていた弽を床に落としてしまった。
「「マサさん!?」」
そう、トミー先生が呼んだコーチはマサさん、もとい雅貴くんだった。
湊が雅貴くんのことを知っているのはこの前聞いたけど、海斗も知り合いのような反応をしているのには驚いた。
「落としたよ」
「あ……り、がとう……」
落とした弽を静弥が拾ってくれていた。しかしそれを受け取っている間、目線はどうしても雅貴くんの方を向いてしまう。
「静華お前、双子だったのか!? そっくりだな」
「えっ、う、うん。言ってなかったっけ?」
湊と海斗に詰め寄られていたのに、いきなりこっちに話しかけてきてびっくりした。けど、意外と普通に話せてほっとした。
「聞いてないぞ。湊と幼馴染だってこともな」
「なんでマサさんがそのこと知ってるんだ?」
私は湊の名前を出したことはないし、今の言葉から湊もそうなんだろう。ほんとに何で知ってるんだろう。
「それは秘密だ」
「「怖っ」」
静弥を挟んで湊とハモった。
「ストップストップ! まずは自己紹介っしょ! オレたち置いてかないでよ」
「そうだそうだー!」
七緒と遼平が割って入った。
「わしの以前からの知り合いで、五段の滝川雅貴くんじゃ。この若さでなんと弓歴15年。皆、必ず上手くなるから安心してよいぞ」
「ハードル上げないでくださいよ。……滝川雅貴、23歳。普段は夜多神社の神主をしています。マサさんでもタキさんでも、まあ好きなように呼んでくれ」
トミー先生の紹介に苦笑しつつ自己紹介をした雅貴くん。短くなった髪を軽くかき上げていた。無駄にかっこいい動作をしないでほしい。
「じゃあ、マサさん! 俺、山之内遼平っす! よろしくお願いします!」
「おう、遼平な。そっちは七緒か? 海斗から聞いてるよ」
「うっす、如月七緒です。かっちゃんがお世話になってます」
それからしばらく自己紹介タイムが続き、最後に雅貴くんをじっと観察するように見ていた静弥が前に出る。自分の知らない湊の知り合いが気になるようだ。
「部長の竹早静弥です。僕は初対面ですが、もしかして、中学のときに静華が通っていた道場の方ですか?」
「ああ。って言っても、教室を開いていたわけじゃないし、会ったのは偶然だったけどな」
「そうでしたか。静華がお世話になりました」
親みたいな対応をし始める静弥になんだかむずがゆくなった。