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私と乃愛が集合場所に戻ると、みんなはすでに移動の準備を済ませていた。
「間に合った……!」
「ずいぶん遅かったな、そんなに混んでたのか?」
「ううん、ちょっと知り合いに会って話し込んじゃった」
「なるほどな。何事もなくてよかったが、次からは連絡しろよ」
「ごめんなさい」
「わたくしが静華さんを寄り道に誘ってしまったんです。申し訳ありません」
「ああ、いや、責めているわけじゃないんだ。ただ、心配するからな、静華も白菊も」
行くぞ、という雅貴くんの言葉に続き、私たちは会場へ向かった。
*****
「知り合いって、愁?」
会場へ向かう途中、静弥が探りを入れてきた。相変わらず静弥は身内の交友関係を気にする傾向にある。
「惜しい、愁の妹の沙絵ちゃんと執事の東条さん。愁の応援っぽい」
「えっ。静華、愁の妹と知り合いだったのか?」
並んで歩いていた湊もちょっと驚いている。というか、2人とも会ったことなかったんだ。
「うん。昔、愁の家に行ったときに何回か会ったくらいだったけど、覚えててくれたみたい」
「ちょっと待って、愁の家にいつ行ったんだ?」
「え、テスト前とか? 一緒に勉強しようって、たまにだけど愁に誘われて。まあ、最終的に弓引いてたけど」
うわ……みたいな視線を向けてくる2人。
「いくら愁とはいえ、男の家に1人で行くなよ」
湊は弓を引きたいのかそわそわし始めたが、静弥がお説教モードに入ってしまった。
「いや、"男の家"って感じじゃないからね、愁んち。豪邸だし、執事いるし、なんか常にジャズ流れてるし」
静弥が心配するような男の家っていうのは藤原邸みたいなのじゃなくて、それこそ雅貴くんの住んでるアパートとかそういう所じゃないだろうか。
……雅貴くんの家に行ったことがあるという事実はしばらく黙っておこう。というか、中学時代の先輩とか、ちょくちょく人の家に行っていたけど、これも静弥には言わない方がよさそうだ。
「いや、静弥の言う通り、静華はもっと危機感を持て。どんな家だろうが、男に誘われて自宅に行ったんだろ?」
雅貴くんが過保護に便乗してきた。言葉はすごく悪いが、今の素直な気持ちは"お前が言うな"の一言だった。
「……あのー、私、これから試合に出るんだけど、激励とかは……」
「"普段通りの方が落ち着く"んだろ?」
「静弥の鬼!」
話を変えることはできたが、静弥の意地悪は止まらない。からかってるだけなのはわかっているが、そのさわやかな静弥スマイルには若干腹が立った。
「はは、相変わらずだな、静華は。ほら、いつも通りやってこい」
選手控えの近くまで来ると、雅貴くんはそう言って私の頭を雑に撫でた。
弽をして弓矢を持っていると乱れた髪を直せない。
という苦情を込めて雅貴くんに頭を向けると、ぐちゃっとしたところを直してくれーー
「ちゃんとしなよ、静華」
なかった。
雅貴くんの手は静弥によってさりげなく払われ、代わりに静弥の手が髪に触れた。
微妙な気分だが、静弥はいい感じに直してくえれるので納得せざるを得ない。
「……行ってきます」
「おう、皆中きめてこいよ」
「かっちゃん、プレッシャーかけないの」
「ん、オッケー」
「オッケーなの!?」
なんだかんだでいつも通りのノリだ。