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個人戦に出場した静華は、あっという間に決勝戦を迎えていた。順調すぎるくらい順調だ。
静華の射は以前にも増して安定していた。それはつまり、あたる射を再現し続けているということだ。
今、射場にいるのは2人ーー静華と桐先の3年生だった。両者ともに二手皆中で決着がつかず、射詰競射を行なっている。
先に集中力を切らせた方が負ける、そんな勝負だ。
だが、静華の集中力が切れているのは明らかだった。しかしなんとかはずさずに引いている。
「静弥。静華のやつ、今日、体調が悪い様子はなかったか?」
「体調というか……」
静弥は言い淀んだ。
射場にいる静華を見ると、試合前よりも顔色が悪いように思えた。試合中に調子を崩して自信喪失やパニックに陥る可能性はあるが……ここまでいつも通りに引けていたし、大きなミスもなかったからそれは考えにくい。
しかし原因はともかく、今は静華の射を見ることしかできない。
……決着は意外に早く訪れた。
相手選手の矢が的枠を射抜き、審議の結果はずれとなった。そして後に続く静華の矢はあたり。
「ただいまの結果より、女子個人戦優勝は、風舞高校・竹早選手です」
アナウンスが流れ、会場内に拍手の音が響く。
静華と相手選手は退場した。
*****
様子のおかしい静華を迎えに、射場出口まで急いだ。
個人戦は引率として森岡先生が射場の外で待機しており、先に合流する。
「ああ、滝川くん、待っておったよ」
「森岡先生、静華はーー」
「あそこじゃ。滝川くんが迎えに行った方がよかろう」
森岡先生は俺の言葉を待たず、射場出口の方向を示した。
それを視線で追えば、人だかりとまではいかないものの、何やら数人がもめている様子だ。
「何、最後の一射は」
「……すみません……」
「私がはずしたから、後はあたれば何でもよかったの?」
「……」
言い争っていたのは先ほどまで射場にいた2人だった。
桐先の3年生は静華の射に文句があるらしい。彼女の言った"最後の一射"、確かにそれは静華らしくない射だったと俺も思っていたが……。
会が短く、矢勢も落ちていた。あたるにはあたったが、離れの瞬間に弓手をやや跳ね上げていたようにも見えた。
早気というわけではなさそうだが、あてるために射型の崩れを無理矢理修正していたんだろう。
それが相手は気に入らなかったようだ。
指摘された静華は言い返さず、壁にもたれ掛かって俯いたままだった。
「静華、大丈夫か。具合が悪いんだろう?」
「! 雅貴くん……ごめんなさい」
「謝らなくていい。行くぞ」
係の者に自分が風舞のコーチであることを伝え、とりあえず静華を医務室に連れていくことにした。
「ちょっと竹早!」
桐先の子に呼び止められたが、向こうのコーチも現れ、その子を連れて行った。
「相手の子とは知り合いか?」
「……中学のときの先輩。前は、一緒に団体戦に出てた」
「そうだったのか」
しばらく会話もないまま、医務室まで歩く。
……というか、あの子は3年生だったよな。
一緒に試合に出ていたってことは、こいつは1年生の時点でレギュラーになっていたということだ。俺が教える前からじゃないか。