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雅貴くんの使っている洗剤を教えて貰った後、私たちは再び廊下を歩いていた。
他校の選手たちがちらほら見え始めたあたりで、日陰に数人で集まっている選手の中に、見覚えのある人物を見つけた。
弓道着に白いパーカーを羽織ったその人は、私が見つけるのとほぼ同時にこちらに気付く。
「! やあ、久しぶり」
「えっ」
「あれ、まさか俺のこと忘れちった?」
意外にも気さくな感じで声をかけてきたその人ーー二階堂永亮先輩は、チームメイトたちを置いてこちらにやって来た。ていうかチームメイトのビジュアルが濃すぎる。
「わ、忘れてないよ。久しぶり、永亮くん」
「良かった。静華に忘れられてたら、さすがの俺も傷つくよ」
「はあ」
この人こんな感じだったっけ。
「知り合いか?」
「あ、うん。中学のときの先輩で、初心者のときによく弓を教えてもらってた」
「! へえ」
雅貴くんは永亮くんを見て何か思案している様子だ。
「静華って、もしかして年上好き?」
「……え? 何でそんな話に」
永亮くんの唐突な質問に一瞬思考が止まる。
「そっちのお兄さん、年上だろ?」
「年上っていうか、年上だけど、風舞のコーチだよ」
「へえ、風舞ね」
何だその含みのある言い方は。
「ああ、個人戦見てたよ。優勝おめでとう。でもまあ、静華が勝って当然だよね」
「当然って……決勝のことは忘れてほしいんですけど」
「そう言われると、見返したくなる」
永亮くんはスマホをこちらに見せてそう言った。まさか。
「うわ、もしかして撮ってたの!? 消してよお!」
「はは、やだね」
「相変わらずのいい性格……」
「彼女の勇姿はしっかり見届けないとだろ?
「……またそんな昔の話を」
「俺は昨日のことのように覚えてるけど。そもそも、振っても振られてもいないんだ、またやり直すのもーー」
永亮くんが本気かどうかもわからないこと言い始めたところで、雅貴くんが私の肩を軽く掴んだ。それによって永亮くんから引き離される。
「すまない、積もる話もあるだろうが、そろそろ団体戦の時間だ。俺たちはここで失礼させてもらうぞ」
「それは残念。ああ、俺たちも団体戦には出るから、当たったときはよろしく」
思いの外あっさり引き下がった永亮くんは、袴につけたゼッケンを見せた。
辻峰高校の大前だ。
桐先をやめたのは知っていたけど、県外の高校に進学していたらしい。
「行くぞ、静華」
「またね、静華」
何故かピリピリした視線を双方から受けながら、その場を立ち去った。
……気まずい!