6

雅貴くんの使っている洗剤を教えて貰った後、私たちは再び廊下を歩いていた。

他校の選手たちがちらほら見え始めたあたりで、日陰に数人で集まっている選手の中に、見覚えのある人物を見つけた。

弓道着に白いパーカーを羽織ったその人は、私が見つけるのとほぼ同時にこちらに気付く。

「! やあ、久しぶり」

「えっ」

「あれ、まさか俺のこと忘れちった?」

意外にも気さくな感じで声をかけてきたその人ーー二階堂永亮先輩は、チームメイトたちを置いてこちらにやって来た。ていうかチームメイトのビジュアルが濃すぎる。

「わ、忘れてないよ。久しぶり、永亮くん」

「良かった。静華に忘れられてたら、さすがの俺も傷つくよ」

「はあ」

この人こんな感じだったっけ。

「知り合いか?」

「あ、うん。中学のときの先輩で、初心者のときによく弓を教えてもらってた」

「! へえ」

雅貴くんは永亮くんを見て何か思案している様子だ。

「静華って、もしかして年上好き?」

「……え? 何でそんな話に」

永亮くんの唐突な質問に一瞬思考が止まる。

「そっちのお兄さん、年上だろ?」

「年上っていうか、年上だけど、風舞のコーチだよ」

「へえ、風舞ね」

何だその含みのある言い方は。

「ああ、個人戦見てたよ。優勝おめでとう。でもまあ、静華が勝って当然だよね」

「当然って……決勝のことは忘れてほしいんですけど」

「そう言われると、見返したくなる」

永亮くんはスマホをこちらに見せてそう言った。まさか。

「うわ、もしかして撮ってたの!? 消してよお!」

「はは、やだね」

「相変わらずのいい性格……」

「彼女の勇姿はしっかり見届けないとだろ? とはいえさ」

「……またそんな昔の話を」

「俺は昨日のことのように覚えてるけど。そもそも、振っても振られてもいないんだ、またやり直すのもーー」

永亮くんが本気かどうかもわからないこと言い始めたところで、雅貴くんが私の肩を軽く掴んだ。それによって永亮くんから引き離される。

「すまない、積もる話もあるだろうが、そろそろ団体戦の時間だ。俺たちはここで失礼させてもらうぞ」

「それは残念。ああ、俺たちも団体戦には出るから、当たったときはよろしく」

思いの外あっさり引き下がった永亮くんは、袴につけたゼッケンを見せた。

辻峰高校の大前だ。

桐先をやめたのは知っていたけど、県外の高校に進学していたらしい。

「行くぞ、静華」

「またね、静華」

何故かピリピリした視線を双方から受けながら、その場を立ち去った。

……気まずい!

HOME