2

辻峰の試合が終わった後、オレたちは再び待機場所に戻り、話し合っていた。

辻峰のデータは検索しても全く出てこない。桐先のような強豪校ではないようだけど……。

「中学のとき、先輩後輩だったんだろ? 何か情報ないのかよ」

「情報……あ、わりと親切な先輩だった。聞いたら教えてくれるし」

湊、かっちゃんが聞きたいのはそれじゃないっしょ。かっちゃんからは案の定"使えねえ"という呟きが漏れる。

「湊、さっきずっと見てたろ」

「そう! やっぱりかっこいいと思ってさ」

そう答えた湊のテンションは高い。

「おい、今から射型変えるとか言い出すんじゃねえだろうな」

「それはないけど……」

「静華はあの先輩と仲良いんだっけ? さっき、静華もすごい集中して見てたよね」

その遼平の言葉に、静華は微妙な表情になった。絶対何かあるやつだ。それに静華がここまで顔に出るのは珍しい。

「静華は? 何か情報ないのかよ」

「有益な情報は特にないよ」

「無益な情報ならあんのかよ」

「うん。桐先で、私が入部してすぐの頃によく教えてもらってた」

「えっ、流派が違うんじゃなかったの?」

「永亮くーー先輩には斜面で教わってたんだよ」

衝撃の新事実。っていうか名前呼び!?

いや、よく考えたら静華にはオレたちみんな名前で呼ばれているけど。他校の先輩となると話は別だ。

「結局、正面で引くことにしたけどね」

「なんで?」

「……まあ、ほら、私の最初の師匠は湊と愁だから」

「弓道というのは、まず師匠あってのことだしね。その教えを弟子の一存で変えるのはあり得ないんだ」

遼平の問いに答えた静華の言葉を引き継いだ静弥。ここまで会話に入ってこないで思案顔だったのが怖いんだよなあ。

「すまんのう、引率と顧問が席を外して」

「師匠だの弟子だの、何の話だ?」

マサさんとトミー先生が戻ってきた。

「湊と遼平と静華が射型を変えるって言ってまーす!」

「「「言ってない、言ってない!」」」

オレが茶化すと、3人はびくりと震えて速攻否定した。

「斜面打起こしがかっこいいとは言ったけど……!」

「あ、でも静華は辻峰の先輩に斜面で教わってたんだよね」

「遼平、何で私を生け贄に出すの!?」

「えぇっ、俺そんなつもりじゃーー」

揃って真っ青になった静華と遼平。そこにマサさんが口を開いた。

「まあ、現実的な話をすると、みんなまだ体で射型を覚え込もうとしてる段階だから、射型を変えるメリットはない。まずは練習してきたことを大切に。結果は後からついてくる」

マサさんは冷静にそう諭した。

オレはマサさんの様子にもさっきから違和感を感じている。具体的には、回復した静華を連れて戻ってきたあたりから。

それについて聞いてみたいところではあるけど、あいにく試合の時間が迫っていた。

HOME