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辻峰の試合が終わった後、オレたちは再び待機場所に戻り、話し合っていた。
辻峰のデータは検索しても全く出てこない。桐先のような強豪校ではないようだけど……。
「中学のとき、先輩後輩だったんだろ? 何か情報ないのかよ」
「情報……あ、わりと親切な先輩だった。聞いたら教えてくれるし」
湊、かっちゃんが聞きたいのはそれじゃないっしょ。かっちゃんからは案の定"使えねえ"という呟きが漏れる。
「湊、さっきずっと見てたろ」
「そう! やっぱりかっこいいと思ってさ」
そう答えた湊のテンションは高い。
「おい、今から射型変えるとか言い出すんじゃねえだろうな」
「それはないけど……」
「静華はあの先輩と仲良いんだっけ? さっき、静華もすごい集中して見てたよね」
その遼平の言葉に、静華は微妙な表情になった。絶対何かあるやつだ。それに静華がここまで顔に出るのは珍しい。
「静華は? 何か情報ないのかよ」
「有益な情報は特にないよ」
「無益な情報ならあんのかよ」
「うん。桐先で、私が入部してすぐの頃によく教えてもらってた」
「えっ、流派が違うんじゃなかったの?」
「永亮くーー先輩には斜面で教わってたんだよ」
衝撃の新事実。っていうか名前呼び!?
いや、よく考えたら静華にはオレたちみんな名前で呼ばれているけど。他校の先輩となると話は別だ。
「結局、正面で引くことにしたけどね」
「なんで?」
「……まあ、ほら、私の最初の師匠は湊と愁だから」
「弓道というのは、まず師匠あってのことだしね。その教えを弟子の一存で変えるのはあり得ないんだ」
遼平の問いに答えた静華の言葉を引き継いだ静弥。ここまで会話に入ってこないで思案顔だったのが怖いんだよなあ。
「すまんのう、引率と顧問が席を外して」
「師匠だの弟子だの、何の話だ?」
マサさんとトミー先生が戻ってきた。
「湊と遼平と静華が射型を変えるって言ってまーす!」
「「「言ってない、言ってない!」」」
オレが茶化すと、3人はびくりと震えて速攻否定した。
「斜面打起こしがかっこいいとは言ったけど……!」
「あ、でも静華は辻峰の先輩に斜面で教わってたんだよね」
「遼平、何で私を生け贄に出すの!?」
「えぇっ、俺そんなつもりじゃーー」
揃って真っ青になった静華と遼平。そこにマサさんが口を開いた。
「まあ、現実的な話をすると、みんなまだ体で射型を覚え込もうとしてる段階だから、射型を変えるメリットはない。まずは練習してきたことを大切に。結果は後からついてくる」
マサさんは冷静にそう諭した。
オレはマサさんの様子にもさっきから違和感を感じている。具体的には、回復した静華を連れて戻ってきたあたりから。
それについて聞いてみたいところではあるけど、あいにく試合の時間が迫っていた。