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地方大会が終わり、私は表彰式に参加していた。

横には男子団体戦準優勝の辻峰高校ーー永亮くんがいる。そしてその横には愁の姿もあった。

「静華、調子はどう?」

「え?」

「個人戦の決勝、具合悪かっただろ?」

他の選手が表彰されている間、永亮くんに小声で話しかけられた。

「今は大丈夫」

「そ、良かった。心配だったんだ」

「え、あ……ありがとう」

雅貴くんと一緒にいたときとは違って、いたって普通、それこそ中学時代の親切な先輩だった頃ようなことを言う永亮くん。

思わず永亮くんを見上げると、愁もこちらを見ていたことに気づく。

なんか言わないと……と思っていたら、タイミングが良いのか悪いのか、表彰のため私の名前が呼ばれた。

*****

地方大会だからか、そこそこ大きめのトロフィーを貰ってしまった。

「運ぶの手伝おうか」

「大丈夫だよ。ていうか、永亮くんだってトロフィー持ってるじゃん」

「これくらい持てるって」

表彰式を終えて射場を出ると、永亮くんはニコニコしながらソッコー話しかけてきた。運んでくれるのはありがたいけど、風舞の待機場所まで来られると普通に気まずいから遠慮したい。

「もしかして、俺が風舞の奴らにちょっかいかけるんじゃないかとか思ってる?」

「……まあ、若干。うちのコーチにも何か言ってたし」

私がそう言うと、永亮くんは首を傾げた。

「あのコーチとどういう関係?」

「どういうって……師匠ですけど。正面の」

「それだけ?」

「うん」

今はそれだけの関係だ。

「ふうん。ま、いいや。次会うときは全国大会だね」

永亮くんのその言葉で会話の終わりを予想したけど、私が返事をする前に言葉が続けられた。

「ーーと言いたいところだけど、改めて連絡するよ。また会えるのを楽しみにしてる。じゃ、おつかれちゃん!」

「えっ、ちょっと待っ……もう。ーーおつかれちゃんです!」

永亮くんは言うだけ言って、呼び止めても背を向けたまま手を振るだけで、あっさり帰っていった。ていうか半ばやけくそで返しちゃったけど、"おつかれちゃん"って、一世代前っぽい言葉選びだなぁ……。

*****

永亮くんと別れ、待機場所に戻ろうと廊下を歩く。今日はなんだか疲れた。

早く帰ってお風呂に入りたい、なんて思っていたら、またしても話しかけられた。

「静華。今、時間あるかい?」

「……愁。どうしたの?」

「いや、大したことではないんだけど」

と、前置きした愁。

「ああ、言い忘れてた。優勝おめでとう」

「ありがとう。って、愁もじゃん。おめでと」

愁はふっと微笑んだ。

「それで、二階堂先輩のことなんだけど」

愁も桐先中の先輩だと気づいてはいたようだけど、特に親しかったわけでもないはずだ。突然話題に出されて少し驚く。

「あ……うん。私も今日久々に会って、びっくりしたよ」

「そうなのか? さっきのやり取りを見る限り、以前と変わらない様子だったから、親交が続いていたのかと思っていたよ」

「ううん。中2くらいから、なんていうか、フェードアウト? みたいな感じだったし」

私が夜多の森に通い始める少し前から、永亮くんとはあまり会わなくなっていた。理由は詳しくわからないけど、その頃から彼の様子に違和感を感じていたことは覚えている。

とはいえ、当時付き合っていた人と何故か疎遠になってしまったことには、そこそこショックを受けていたんだけど。人の気も知らないで、と思わないこともない。

「そうだったのか。すまない、失礼なことを聞いてしまったね」

「いいよいいよ。ま、あんまり気にしてもしょうがないしね」

「……静華の、そういう切り替えが早いところは、見習わなければと思わされるよ」

「なに急に。褒めても何も出ないよー」

「? 欲しいものがあるときは、直接言うけれど」

愁のこれはボケじゃないからツッコんじゃだめだ。

「それで、永亮くんのことで何か気になることでもあった?」

「いや、それはもう聞けたから大丈夫。……それじゃ、全国大会、楽しみにしているよ」

「あ、そう? じゃあ、またね」

永亮くんと同じようなことを言って言って去っていった愁。というか、私と永亮くんがまだ付き合っているかどうかを聞きにきたってこと……?

愁が恋バナなんて、意外すぎる。

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