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大会後、私たちは弓具を置くため風舞の弓道場に戻ってきた。
矢道側のシャッターが下りているからか普段より狭く感じる。
「まずは静華くん、個人戦、優勝おめでとう」
トミー先生はいつもの調子で話しているが、その横の雅貴くんの表情は険しい。
「結果を残せたとて、自分の射に納得できんこともあるじゃろう。しかし、わしは今日、静華くんは立派に引ききったと思っておるよ」
「……ありがとうございます。また練習頑張ります」
トミー先生は頷き、目線を男子たちの方に移した。
「そして、男子諸君。反省点はわかったかのう?」
「これくらいわからないようじゃ、全国大会は遠いぞ」
トミー先生に続き、雅貴くんの放った言葉は強いものだった。
雅貴くんがそんな言い方をするのは珍しい。驚いてとっさに雅貴くんの顔を見てしまったが、男子の方をまっすぐ見たままだ。
こういう時、最初に反論するのはたいがい静弥。
「そういう高圧的な言い方はどうかと」
静弥の言葉を受けた雅貴くんは、一瞬やれやれと言わんばかりの表情を見せた。しかし、すぐにそれは言葉となってぶつけられる。
「わかった、言い直す。3回戦目、お前たちの射には良いところがなかった」
トミー先生は今日の結果には原因、理由があると言っていた。そしてそれを、決勝を見て考えろとも。
でも、みんな3回戦の結果が受け入れがたいのか、それどころではない様子だった。決勝戦を見てはいたけど、自分たちの射と何が違うのか、どうして違ってしまったのかを考えたのは多分、七緒くらいじゃないかと思う。
「そう言うけど、マサさん。おれ、落ちとしてみんなのために頑張ったんです! なのにこれって……」
湊は"悪いところがわからないから反省のしようがない"と言った。
今回の結果を皆中の人に"これ"なんて言われたら、1中だった海斗のメンタルが心配になってくる。海斗の不調は、海斗自身の問題というよりは、もっとーー。
……その海斗はといえば、自分が1中だったせいで負けたんだと主張しているけど。その度に七緒は不満げな表情を見せる。やっぱり七緒はわかってるんだ。
遼平は矢を失くしたり、愁に借りた矢を返し忘れたりして落ち込んでいて、そこまで思考が追いついていないのかもしれない。遼平の的中率は普段とそこまで変わらなかったけど、本調子ではないだろう。
ーー確かに湊は3回戦目、皆中だった。成績としては悪いところなんてないと言い切れる。
でも、多分、外から見ていたからわかるだけだろうけど、湊の射は今までと違っていた。はっきり言ってしまえば、今回、全体のリズムを崩していたのは湊だ。
それに気づいていないのは、おそらく愁や永亮くんの射を意識していたからで。……私も人のことは言えないけど。
「なるほど。"悪いところがわからない"、か。なら話は簡単だ」
雅貴くんはそのことを湊自身に気づいてほしいんだろう。怒るわけでも叱るわけでもなく、雅貴くんはあくまで冷静に、言葉を続けた。
「――湊、お前はしばらく、的前に立つな。矢を番えて、弓を引くことを禁止する」
そんなことを言われるとは思っていなかったのかーー私も予想外だけどーー湊は横暴だと反論した。
けど、トミー先生はそれを否定した。雅貴くんの指導にはいつもちゃんと理由がある。その説明を端折ることはよくあるけど、今回はあえて言わないつもりなのかも。
私の勝手な分析はともかく、今日は解散となった。いつも通り静弥と湊と一緒に帰ろうとすると、ジャージのポケットの中でスマホが震え出す。
……これは。
届いたチャットを見ると、やっぱり永亮くんだった。
書かれているのは日時と場所だけ。そんな詐欺の受け子への指示みたいなチャットを元カノに寄越すな。
「どうしたの、静華」
「迷惑メールだった」
「いい加減アドレス変えたら? 1度も変えてないだろ」
もっと早く静弥の言うことを聞いておけばよかったかも。