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翌日。
昨日の説明会と同様に初心者向けの弓道講座が開催されていた。
トミー先生の解説から始まり、次に経験者による射法八節の指導。
小野木くんのイラつきも高まる一方のようで、怒鳴りながら初心者の男子に教えていた。
「もっと"グーッ"と伸ばせ! グーッだ!」
「ぐ、グー? こう……?」
「だから違ぇってーー」
「いやいやかっちゃん、それじゃわかんないっしょ」
私もそう思う。
「ねえ、あの人……小野木くんだっけ? 怖くない?」
私の教えていた女子も萎縮してしまっていた。
言いたいことはなんとなくわかるけど、さすがに擬音すぎる。
「小野木くん」
「あ? んだよ竹早」
「"グーッ"て、こうじゃない?」
完全に小野木くんにビビっていた男子の腕を軽く引っ張って、会から残心の体勢を取らせた。勝手に触っちゃったけど嫌がってないので多分大丈夫。
「大三からは力まずに、肩甲骨下ろして胸を開きながら左右均等に引き分けると良いよ」
「なるほど……」
「静華教えんのうま! ねえねえ、今のオレにもやってよ」
「七緒はできるでしょ?」
「いやぁ、今の見ちゃったらねぇ〜。もうご褒美にしか見えないっていうか。ねぇ、かっちゃん?」
「っ、はぁ!? 俺は別にーー」
七緒は空気読みすぎってくらい読んでてすごい。小野木くん周辺の険悪な空気感が一気に軽くなった。
もう大丈夫そうだと思い自分の持ち場に戻ると、今日の練習はここまでと先生から声がかかる。
「あ、ごめん、半端になっちゃって」
「全然いいよ、むしろ小野木くん宥めてくれてありがとう。私、実はずっとあの怒鳴り声が怖くって……」
小野木くん、怒りっぽくなければ普通に友達できそうなのに。もったいない。
*****
帰り支度をする初心者たちと分かれ、経験者8人はトミー先生に呼ばれて集合した。
「君たち、県大会予選に出場してみんかね?」
急な話にみんな戸惑っていた。それもそのはず、初心者指導が中心で、経験者たちはろくに的前に立っていないのだから。仕方ないけど。
「妹尾とわたくし、中学には弓道部がなく、試合経験がありませんの」
「私も試合は初めてです」
白菊さん、妹尾さん、花沢さんの女子3人と、ほぼ初心者の遼平は試合に出たことがないようだった。
「いいじゃん出ようよ。かわいい女の子が一緒だと、オレやる気出ちゃうよ」
「如月くんのやる気のために弓道はしておりませんわ」
「さーせん……」
女子には無敵だった七緒も白菊さんにはバッサリ切られていてちょっと笑ってしまった。
「静華は? 試合出たことある?」
同じく七緒を笑っていた遼平がこちらを向いてそう聞く。
「あるよ」
「あるどころか、静華は去年の全中、個人戦で優勝したじゃないか」
静弥が余計なことを言い出した。あとでつねる。
「優勝!? すげー!」
「マジか!? お前もっと早くそれを言えよ!」
そして遼平と小野木くんは相変わらず声がデカい。
「なんと! これは心強いのぉ。とはいえ、団体戦は5人が決まりじゃから生憎人数が足りん。皆、個人戦で参加ということで、どうじゃろう?」
女子部員同士で顔を見合わせたが、特に断る理由もなさそうだった。そして妹尾さんが代表して答える。
「別に、異論はありません」
男女ともに経験者は4人ずつしかいないため、それ以外に選択肢はない。けど、静弥は絶対反論する。
「待ってください。僕は個人戦には出ません」
それからケンカの予感もする。
「男子は団体戦にエントリーさせてください。もう1人、入部予定の者がいます」
「あの腰抜けのこと言ってんのか? 入るもんか」
「湊は腰抜けじゃないし、必ず入部する」
「入ったところで俺は認めないぞ、あんな下手クソ」
「昨日静華に言われたこと、もう忘れたのかい? それに、本来の腕前は湊の方が上だと思うよ。ね、静華?」
「えっ」
静観していたのに、巻き込み事故だ。助けて七緒。こっち見るな小野木くん。
と思っていたらほんとに七緒が口論を止めに入った。そしてまたオロオロしていた遼平は安心したのかため息を吐く。
結局、この日は結論が出ずに解散となった。