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静華の残心はお手本みたいに綺麗だ。
「静華。お前のことだからわかっているとは思うが、残心で終わりじゃないぞ」
「あ……うん。ごめんなさい」
けど、今日は珍しく初歩的なミスーー弓倒しをしながら流れで物見と足踏みを戻したこと――を、マサさんに注意されていた。
県大会予選から地方大会まで、静弥と同じく公式戦では1度もはずしていなかった静華が、今日の練習では逆に1本もあたっていないし、矢所もバラバラだ。
練習中にはずすことは別に珍しくもないけど、的中率0%はさすがに異常事態っしょ。
それから弓立ての前でぼーっとし始めた静華に、花沢さんたちが声をかけに行った。
「静華、どうしちゃったの?」
「具合悪い?」
「ううん。なんかだめな日かも」
「あの……先ほど斜面打起こしで引いていたから、射型が崩れてしまったということはありませんの?」
白菊さんは心配そうにしながらも、静華が斜面で引いていたことを気にしていたらしい。
「射型が崩れているというほどじゃないが、白菊の意見は一理あるな」
「どういうことですか?」
マサさんは女子の会話に迷いなく入って行った。マサさん、結構そういうとこあるよねぇ。もちろん変な気がないからこそだけど。
「聞きたいか?」
妹尾さんたちに理由を聞かれたマサさんは、静華に問う。
「やだ。聞きたくない」
「えっ、静華?」
静華の意外な答えには、オレたちも驚いた。
「……今日はもうやめる。多分、このままやっても意味ないと思うから」
「わかった。気をつけて帰れよ」
「うん。ありがとうございました」
静華はマサさんに一礼して、弓道場を去って行った。
みんなが心配そうにそれを見送る中、声を上げたのはかっちゃんだ。
「マサさん、何で静華に教えてやらなかったんだよ?」
「何でって、"聞きたくない"と言われてしまったからな」
まるで拗ねているかのようなその言い方に、オレもかっちゃんに便乗しそうになる。
「それに、あいつは弓と矢筒を持って帰っている。どうせ、今頃
マサさんはニッと笑って言葉を続けた。
「静華が理由を聞きたがらなかったのは、自覚している欠点をみんなの前で言われたくなかったからだよ」
「そう思うなら、あのような聞き方をするべきではなかったと思いますが」
「他にどう聞けって言うんだ」
やれやれといったように答えたマサさんは動じていないけど、静弥は明らかにイラついている。マサさんに限らずだけど、静華のことで他人に知ったような口をきかれると、結構こうなるのだ。
「まあまあ、時には厳しさも必要ってことっしょ。それに、ダメなところに自覚があるなら、静華はすぐ修正してくるって」
「そ、そうだよ! 静華にだって調子悪いときくらいあるだろ? きっと何日かすれば戻るよ!」
遼平のフォローもあってか、その場はなんとか収まった。