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「その斜面の先生は、亡くなられたの?」
思いもよらない質問に、一瞬思考がフリーズした。
「……えっ!? あ、いや、全然生きてます! 元気です!」
多分、1個上の先輩じゃなくて正式な指導者だと思われてるんだ。完全に私の説明不足だった。
「え? なーんだ、なら、そんなに深刻そうな顔しないでちょうだい!」
「すみません……」
「生きてるなら一回ガツンと言っちゃいなさい。"あなたのせいで正面引かされてます"って」
「いや、別に嫌々正面でやってるわけじゃーー」
「いいえ。途中で弟子をほっぽりだすなんて、師匠としてあるまじきことです。流派なんて関係ありません」
圧がすごい。
「わ、わかりました。今度会う予定なので、言ってきます……」
「……ちゃんと言うのよ?」
「はい!」
松崎さんには逆らわんとこ。と思った。
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それから何本か引かせてもらい、弓友会の活動時間が終わると、私も一緒に道場を出た。
「静華ちゃん、今度は全国大会に出るのよね?」
「はい。8月末に」
「楽しみにしてるわ。まずは"ハイシン"のやり方を孫に教えてもらわないとね」
「あはは、ありがとうございます」
松崎さんと並んで階段を下りていると、向かい側から見慣れた人物が上ってくるのが見えた。
「ん? スミさん、珍しいですね、こんな時間に――って、静華! やっぱりここにいたか」
「あら、雅貴くん、静華ちゃんとお知り合いなの」
「雅貴くんは、さっき言った風舞のコーチですよ」
「あらあら、そうなの。不思議な縁ね」
あらあら〜とニコニコしている松崎さん。雅貴くんが"スミさん"と呼んでいることから、そっちもそっちで知り合いのようだ。
「その話は前にもしたんですが……」
「細かいことは覚えていられないのよ、この年になると」
細かいことなんだ……。雅貴くんも苦笑しているあたり、いつもこんな感じなんだろう。
「じゃ、あとは若いおふたりで」
「「えっ」」
松崎さんは笑顔で手を振り、階段を下りて行った。
「あー、静華は、スミさんと知り合いだったのか?」
「ううん。さっき知り合った。ここ来たら、弓友会の人たちがまだ道場使ってて。松崎さんが、よかったら一緒にどうぞって言ってくれたんだよ」
「へえ。そりゃ運が良かったな」
「うん。……あっ」
「ダジャレか」
「うーん」
「それもダジャレになってるぞ」
今のはあんまりおもしろくなかったなと反省していると、雅貴くんは笑い出した。