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結局、雅貴くんにされるがまま手当てを受けた。
絆創膏を貼ってもらったところをなんとなく撫でていると、雅貴くんはまた心配そうに見てくる。
「痛むか? まあ大丈夫だとは思うが、一応お父さんに診てもらえよ」
「痛くないよ。ていうか、うちの父は整形外科医なんだけど」
「切り傷くらい診られるだろう」
よく知らないが、と続けた雅貴くん。そんな関西人みたいな。
「右手にケガしたら不便だろ、学校とか大丈夫か? というか、利き手はどっちだったっけ」
「うぇ、ほんとに大丈夫だって、左利きだし。ーーあ、静弥は右利きだよ」
「そうなのか? というか、なんで静弥情報を添えたんだ」
「えっ、知りたいかと思って。あと、つむじも逆巻きなんだよ」
「……そうか。うん、今度確認してみるよ」
めっちゃどうでもいいみたいな顔された。双子の持ちネタなのに。
私がそんなくだらないことで軽く落ち込んでいると、雅貴くんは急に真面目な顔になった。
「明日からの部活はどうする? 自主練の方が集中できるなら、ここで引いていてもいいぞ」
「ううん。学校でやる」
今日だって早退したのははずしまくってるところを見られて、心配されるのが恥ずかしかったからで。いわばしょうもないプライドだ。
「はずしてるとこ、みんなに見られたくなかっただけだから。こういうの、一回逃げたら逃げ癖がつくし」
まあ、今日は逃げてしまったわけだけど。おかげで頭を少し整理することもできたから結果オーライってことにしておく。
それと、もう一つ。
「あの、ちょっと言っておきたいことがあるんだけど……」
「ん?」
「今度、永亮くんと会ってくる」
「! ……そうか」
「地方大会の後に連絡が来て、話そうって。何の用か気になるし、私も聞きたいことがあるから」
話そうというか、場所と日時が送られてきただけなんだけど。
何も言わずに会いに行って、後から発覚したら気まずいし。そもそもやましいところはないから、先に言っておきたかった。
でも、"そうか"って。リアクション薄かったな……なんて言ったら、めんどくさい奴だと思われてしまうかな。
「会いたい人には、会えるときに会わないとだめだ」
「え?」
「以前、俺が湊に言われた言葉だよ。県大会の前日、じいさんのことを聞きに大曽根先生に会いに行けってな」
「ああ……すごい説得力」
雅貴くんの額に残った小さな傷痕をつい見上げてしまった。
雅貴くんの師匠である八坂先生との話を、あの時詳しく知っていたのは男子たちだけだった。私は雅貴くんが青森へ出発した後で、湊に事情を教えてもらったのだ。
「大事な話があるんだろ? なら、俺の私情で引き留めることはしないさ」
……ていうか、そうだ。雅貴くんは雅貴くんで、あんな大事なことを私には詳しく言わずに行ったんだし、今さらこっちがそんなに気を遣う必要ないのでは? と開き直りそうになる。
「それと、なんだ……もし万が一、二階堂くんとよりを戻すなんてことになったら、早めに教えてくれると助かる。後から知るとショックが大きい」
「は? えっ、ちょっと待って、雅貴くん私のことなんだと思ってるの。そんなことあるわけーー」
「今はかわいい教え子だな。数年後にはかわいいお嫁さんになる予定だが」
「へぁ、よめ? およ、お嫁さん!?」
「なんだ、違うのか?」
「…………しらない」
「知らないって、ひどいな」
「し、しらないもん、このエロおやじ……!」
「そう思われているなら、そうするが?」
恥ずかしさのあまりヤケクソで雑に罵ってしまった。しかし雅貴くんはそんなことには構わず、突然ぐっと顔を近づけてくる。
しばらく至近距離で見つめ合っていたら、不意に雅貴くんはニッと笑って距離を取り、得意げな表情で言った。
「……ふっ、なんてな。我ながら大人げないとは思うが、俺も本気だ。――二階堂くんと話すときに俺を思い出さないよう、せいぜい頑張ることだな」
「な……っ」
なにそれ。ずるすぎる。