2
*****
「藍、服を着なさい」
「えっ、着てるんだけど……」
シャワーを終えて出てきた藍は、キャミソールにホットパンツという出で立ちだった。
「これしか持って行ってなかったから、どっちにしろ部屋行かないと服ないよ」
「いいのか、俺がムラムラしても」
「いや自制してよ、大人なんだから。ていうか妹相手にムラムラしないでよ」
痛いところを突かれた。
「くっ……いいからTシャツとか何か着てこい。髪乾かしてやるから」
「はぁい」
いつもより素直だと思ったら、若干眠そうにしていた。合宿の疲れもあるだろうし、無理もないか。
「雅貴、出前取るぞ。藍も疲れてるみたいだし、飯作らせるのもかわいそうだろ」
「ああ、頼む」
「藍ー、寿司とピザどっちがいい?」
蓮がそう聞くと、藍は寝室から顔を覗かせて答える。
「蓮兄の好きな方」
「じゃあ寿司だな。ピザ食いたかったら両方取るけど、いいのか?」
「蓮兄と同じのがいいー」
藍はまだ着替えておらず、なのに戻ってきたと思ったらそのまま蓮の腕に抱きついた。俺はすぐにそれを引っぺがす。
「お前も自制しろ」
「マサ兄のケチ……」
諦めて大人しくなった藍は着替えに戻る。
「"マサ兄のケチ"、か……案外、悪くない響きだな」
「お前も懲りないな。ーーあ、藍って寿司はサビ抜きでよかったか?」
「ああ。ワサビの辛さに悶えるところを見たければ別だが」
「はいはい、サビ抜きね」