湊&静弥を応援
※先行上映で見た記憶をもとに作成しています。
※地上波での放送後内容を大幅修正する可能性があります。
【湊視点】
フットサルの試合前、相手チーム側にいた海斗の応援をしていた藍は、静弥に怒られていた。
「僕たちより海斗を応援するのかな、藍は?」
「いや、チームとしてはこっちを応援してるんだよ? でも海斗も弓道部だし」
「まあ、藍の応援で浮かれてくれた方が勝ちやすいからいいけど」
「いいんだ……」
それから静弥は作戦を説明し始めた。
さっきは中断させられてしまったけど、やっぱり早く弓を引きたい。県大会を経て、ようやく自分の射の感覚を掴めそうな気がしているんだ。だから今はもっと矢数をかけて、それを確実なものにいていかないと。
「ーー湊、聞いてる?」
静弥に突然声をかけられて我に返った。
「え? ……ごめん、聞いてなかった」
「はぁ……湊はとにかく、引っかき回してくれればいいから。そうすれば、海斗も予想通りに動いてくれるだろうしね」
「わかった」
とりあえず、普通にフットサルをすればいいんだろう。
作戦会議が終わり、あとは試合開始を待つだけになった。
「竹早がサッカーに詳しいの、なんか意外だな」
静弥の作戦を一緒に聞いていたクラスメイトがそう言った。
「静弥は昔からテレビでサッカーの試合を見ては、戦略がどうとか言ってたよ」
「へえ。……そういえば、鳴宮たちって弓道部だったよな。弓道ってなんか高尚なイメージがあったけど、楽しいの?」
「そう? 楽しいよ」
「滝川さんも弓道部なんだよな?」
「ああ。そうだけど、藍はマネージャー兼アドバイザーなんだ」
「えっ、滝川さんが弓道教えてんの!?」
「いや、コーチは別にいるよ。ただ、藍も知識と経験があるから、なんていうか、コーチ補佐みたいな……?」
「そうなのか。いいなあ、俺も滝川さんに何か教わりて〜」
「"何か"って……」
藍も七緒みたいにファンがいるのは知っていたけど、まさかこんなところにもいたとは。
なんて驚いていたら、いつのまにかコート脇で女子と話していた藍がこっちにやって来た。
「湊ー、静弥ー、そろそろ試合始めるって!」
「じゃあ行こうか、湊」
「ああ」
「がんばってね、2人とも」
「ありがとう、頑張るよ」
おれと静弥が藍に向かってそれぞれ拳を突き出すと、藍も拳を軽くぶつけてくる。
「滝川さん、俺も応援してくれ!」
「えっ、あっ、頑張ってね! えっと……田中くん!」
いや、クラスメイトの名前くらいは覚えといてあげなよ。
*****
試合終了後、おれたちと藍はハイタッチをした。
「湊のシュートすごかったよー!」
「いや、あれは運が良かったよ。あと静弥のパスも」
「湊なら決めてくれると思ったからね」
おれたちが話していると、海斗がうなだれているのが見えた。
「わりぃ……俺がもっと、動いてれば……!」
「いや、小野木が一番動いてたって」
相手チームの中で1人汗だくになっている海斗。
ちょうどおれたちがその前を通り過ぎるタイミングで藍が声をかけようとしたが、静弥が止めた。
目の前に立った静弥を海斗が見上げる。そして、
「おつかれ、かっちゃん」
静弥の予想外の言葉におれも藍もポカンとしたまま、先を歩き始める静弥について行くしかなかった。