部室で-1
※若干キャラ崩壊注意
「愛生さん、したい」
「え、また?」
放課後、弓道部の部室ーーとは名ばかりの小さい倉庫に集まっていたのは、二階堂と愛生だった。今日は一日雨なので、部活は休みとなっている。
それでもこの2人がここを訪れるのは、逢瀬を楽しむためだ。
「二階堂さ、危ないことしてる自覚ある?」
「わかってますよ。ていうか、名前」
閉所恐怖症の二階堂のために、部室の扉は光が差し込む程度に常に開けてある。未だ誰にもバレてはいないが、ほぼ屋外に等しい場所で行為に及ぶことには、愛生は毎回内心冷や汗をかいていた。
「するのはいいけど、家まで我慢してよ。今日も親父いないから、泊まってっていいよ」
「……泊まるけど。今も」
そう言った二階堂の視線は下に落ちた。愛生もそれを追うと、
「……君、今のやり取りのどこに興奮する要素があったの?」
「全部っす」
すでに制服のスラックスを押し上げているそこを見て、愛生は平静を装いつつも羞恥で目を逸らす。一方で、二階堂は早々に開き直っていた。
「どうせ誰も来ねえよ」
「そういうの、フラグっていうんだよ」
「来たとしても不破くらい」
「不破なら見られてもオッケーなわけ?」
「あいつは気づいたら知らないふりして帰るだろ」
「そんな気はするけど……」
愛生が溜息を吐くと、二階堂は我慢の限界とばかりに愛生に詰め寄り、机の上に座らせた。二階堂が少しかがんで目線を合わせると、自然と唇が重ねる。
「なんだ、愛生さんもやる気じゃん」
「嫌とは言ってないよ。でも入れるのはだめ。約束できる?」
「努力はする」
「バカ。……はぁ。いいよ、永亮の好きにして」
「っ! くそ、録音しておけばよかった……」
二階堂は後悔しつつも行為を進めた。
愛生のネクタイを緩め、シャツの前を開ける。
「永亮、さすがにここで全裸はやだからね。寒いし」
「じゃあ下着だけ脱いで、制服着直して」
「なにそのマニアックな発想。いいけど、永亮もやってよ?」
「俺が下で脱いでても何の得にもならないだろ……」
「なるよ、私が興奮するもん。あ、永亮今ノーパンなんだ、って」
「……」
愛生に見上げられ、二階堂は思わず顔を赤くした。
反撃成功とばかりに満足げに笑った愛生は、二階堂に言われた通り下着を脱ごうとし始める。
「永亮、外して」
愛生は下ろしたままの髪を持ち上げて、二階堂に背を向ける。手早くホックを外されて、ストラップを両肩から抜くと同時に、二階堂は後ろから愛生を抱きしめた。
「わ、ちょっと永亮、そんなに溜まってたの?」
回された両手は、胸の感触を楽しむように動き続けている。
「愛生さん、また大きくなった?」
「だとしたら永亮のせいだね」
「俺以外に触らせんなよ」
「何の心配をしてるの、君は」
「だって愛生さん、"胸くらいいいや"とか言い出しかねないだろ」
「まあ相手によるよね、実際」
「ほら」
むっと口を尖らせた二階堂を見て、愛生はなんとなく満足感を得ていた。
「触らせる相手なんか君以外にはいないよ。で、次はどうしてほしいの?」
「……」
二階堂は無言で愛生の正面に回り、中途半端に脱げていた制服のシャツを着直させた。
「ネクタイもして」
「なにそれ。別にいいけど、ド変態だねその趣味」
「愛生さんだって好きだろ、こういうの」
「うん。永亮が喜んでくれるプレイなら、全部好きだよ」
「俺も愛生さんのこと好き」
「話繋がってないじゃん」
他の部員がいるときは、二階堂はこんな甘え方をすることはない。2人きりになった途端に素直になるわかりやすさが愛生は好きだった。
愛生は二階堂の指示通り、ノーブラのままシャツを着直してネクタイを締めた。
「下も脱ぐんだよね?」
「うん。スパッツは着直さなくていい……って、愛生さん、これ」
「なに?」
二階堂は愛生から渡された脱ぎたての下着を持って、何故か怒っていた。
「なんですか、このいやらしいパンツは」
「いや、普通のTバックじゃん」
「学校にこんな……見えたらどうするんですか」
「だから上からスパッツはいてるんでしょ」
「でも下がこれだと思ったら、俺は……っ」
「永亮、生きるの大変そうだね」
パンツ片手に苦悩する二階堂を見て、愛生はなんとも言えない気持ちになる。
「これは俺が預かっておきます」
「あ、うん。どうぞ」
少ししてから、脱いだ下着を上下とも二階堂に持っていかれ、頷くことしかできなかった。