きょうだい弟子-1

※二階堂の家族関係、過去など捏造多め


【二階堂視点】

いつも通り、叔父さんの家で宿題を片付けているときだった。本を読んでいた叔父さんは、不意に顔を上げて俺を見た。

「永亮。中学はどこに行くか、もう決まったのか?」

「桐先だよ。弓道部、強いし」

「そうか! それはよかった」

「よかったって、何が?」

体を壊して入院していた叔父さんは、先月退院したばかりだ。

俺の受験のことよりも、自分の体を気にしてほしいのに。

「実はな、叔父さんには昔、きょうだい弟子がいたんだ」

「え……」

西園寺のところに行く前に言っていた、一緒に切磋琢磨する仲間はいないという言葉。あれはうそだったってこと?

一瞬でもそんな疑いを持ってしまった自分が嫌になる。

「そういえば、永亮とは会ったことがなかったな」

「うん。それ、どんな人?」

「永亮の1つ上の女の子なんだ。その子のお母さんが、俺の師匠だった」

叔父さんの師匠は何年か前に亡くなっている。つまり、そのきょうだい弟子の子には母親がいないってことになる。俺と同じだ。

「師匠――舞田先生の一人娘で、まだ幼いのに射には貫禄があってな」

叔父さんは懐かしそうに笑いながら言った。楽しそうな叔父さんの顔を見るのは久しぶりだった。

「先生が亡くなってからは、ときたまメールを送りあうだけになってしまったんだが……」

「その子には、もう会えないの?」

その子がいれば、また叔父さんも弓を頑張ろうと思ってくれるかもしれない。無理をさせる気はないけど、叔父さんが認めた人がいれば、もしかしたらーー。

「どうだろう。実は、どこに住んでいるのかわからないんだ。突然引っ越してしまってな」

「そう、なんだ」

「でも、通っている学校は教えてくれたから、知ってるぞ」

「! それって……」

叔父さんは頷いた。

「桐先だ。来年からは、弓道部の副部長を任されることになったらしい」

叔父さんは言葉を続けた。

「だから永亮も桐先に行くならよかった。愛生ちゃんとも仲良くなれると思うんだが……」

「うん、俺、絶対桐先に行く。その愛生って子とも仲良くするよ」

「こら、愛生ちゃんは先輩だぞ」

「う……ごめんなさい。ねえ叔父さん、愛生さんはどんな子なの?」

叔父さんは苦笑した。俺がつい言ってしまった言葉にも怒ってはいないようだった。

「そうだな……すごく、落ち着いた……というか、大人っぽい子だったな」

愛生さんのことを話す叔父さんは、どこか心配そうな表情をしている。でもそれを切り替えるように、軽く首を振った。

「――ああそうだ。とてもかわいい子だったから、永亮も会ったら好きになってしまうかもしれないな」

叔父さんは珍しく俺をからかうように、冗談っぽくそう言った。

「そ、そんなわけないだろっ。会っただけでなんて……」

――俺のそんな反論は、数か月後には撤回されることになる。が、このときの俺にそんなことはわかるはずもなかった。

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