合宿2日目-海-1
【不破視点】
合宿2日目の夜。愛生さんが突然姿を消した。
二階堂は飯を食い終わるなりさっさと部屋に引っ込み、何やら書類やノートをまとめていた。
その間に俺たち他の部員は風呂を済ませ、戻ってきたころに二階堂が風呂に向かった。
愛生さんは夕飯の片付けを風舞の後輩たちとやっていて、俺たちも手伝うと言ったが、そんなに人手はいらないと断られてしまった。愛生さんと最後に顔を合わせたのはそこだ。
部屋に荷物は置いてあるし、普通に風呂かと思い、中には入れないが一応向かう。その途中、廊下で見かけた風舞女子たちに聞いてみると、愛生さんとは風呂で会ったが先に戻ったと。
「愛生先輩がどうかしたんですか?」
長身の女子、確か妹尾さんが心配そうにそう聞いてくる。
「夕飯のあとから誰も見てないって言うから、どこ行っちまったのかと思って探してんだ」
別に隠すようなことでもないから理由を話した。それに、探すにしても女子がいた方が助かる。
「よろしければ、わたくしたちも探すのをお手伝いしますわ」
風舞女子たちはいつの間にか愛生さんと仲良くなっていたようだ。
まあ、愛生さんは風舞のコーチに頼まれてこの3人に軽く指導もしていたし、当然といえば当然か。
「悪いな。でも夜も遅いし、館内を少し見てくれればいいから。外には出るなよ」
3人は頷いて、風呂やトイレといった女子しか入れない場所を見に行った。
*****
【荒垣視点】
舞田の姿が見えないことに、最初に気づいたのは樋口だった。
売店で見つけた珍しいお菓子を買ってきたから、一緒に食べようと誘おうとしたらいなかったと。
「俺たちは外を探しに行ってみるか」
俺がそう提案すると、樋口は頷いた。
二階堂は俺たちと入れ替わりで風呂に行っているから、このことは知らない。とりあえず、不破と太田黒は館内、俺と樋口は外を探すことにした。
外と言っても、宿の近くには何もない。道路と、海へ続く階段くらいだ。
夜はあまり灯りのない場所だし、女子が1人で外に出るとは考えにくいが、舞田ならやりかねない。舞田はなんだかんだで面倒見の良いしっかり者だけど、自分のこととなるとわりと適当だ。
「……あ」
「見つけた?」
「ううん。でも、そういえば舞田、"海行ってみたい"って言ってたな〜と思って」
「そうなのか?」
頷いた樋口は海の方へ向かう。俺もそれを追った。
階段を下りて砂浜に入ると、舞田はあっさり見つかった。
「あれ、舞田いた。舞田〜」
舞田は砂浜に体育座りをして海を眺めていた。白いTシャツにネイビーのハーフパンツなんていう、珍しく質素な恰好だ。というか、よく見たら辻峰指定の体育着だった。胸元に名字が刺繍されている。
「舞田、探したぞ」
「なにしてるのー?」
「……海見てたら、すなすなになった」
舞田は座ったまま俺たちを見上げて、砂まみれになった両手を見せてきた。すなすなってなんだと思ったら砂か。
近づいてみてわかったが、舞田は何故かずぶ濡れだ。両手のすなすなより服のスケスケの方が気になるが……。
「舞田、海入ったの?」
「入ってないよ。海水触ってみたくて、そこで遊んでたら、あの石でつまずいて転んだ」
舞田の指さす先には少し大きめの石が転がっていた。
「ケガは?」
「してない。……樋口って、ほんと胸フェチだよね」
「触っていーい?」
「いいわけあるか」
濡れたTシャツの張り付いた姿を見ていた樋口の視線に気づいたのか、舞田は呆れ顔でツッコんだ。
「というか舞田、少しは隠してくれ。目のやり場に困るから」
「え? ああ、これ、水着だから別にいいよ」
「えっ」
「ほんとは海に入ってみたかったんだけど、水冷たすぎてやめたの」
予想外の言葉に、俺も樋口も驚いた。しかし、それなら頼みは1つしかない。
「舞田の水着見たいなー」
「言うと思った。まあいいけど」
樋口の言葉に俺も頷くと、舞田はTシャツをためらいなく脱ぎ始めた。ハーフパンツも普通に脱ぎだすから、俺たちはその光景を見ていいのか見ない方がいいのか迷ったが、しかし欲には逆らえずガン見していた。
舞田が着ていたのはシンプルな白ビキニだった。スタイルが良いとは知っていたが、俺が見たことがあるのは水泳の授業で着ていたスク水くらいだったから――あれはあれで良かったが――なんというか……。
「舞田、舞田、ポーズ取って」
「え、写真撮るの? 恥ずかしいからやだよ」
「え〜、でも、これは二階堂に見せてあげないと」
「…………」
二階堂に見せると聞いて、舞田は迷い出した。見てほしかったんだな、多分。
かわいいとこあるよなぁ、なんて思いつつ樋口と顔を見合わせる。
「……あ、不破から電話きてた」
俺も撮影会に便乗するかとスマホを取り出すと、着信履歴が画面に映る。
舞田がいないからと捜索しているんだったな、そういえば。水着に意識を持っていかれていた。
「あ、もしもし、不破? 舞田いたぞ」
『マジすか? よかった……』
「ああ。海見てたらしい。俺と樋口と一緒にいるから、もうすぐ戻る。二階堂はどうしてる?」
『まだ風呂っす。大田黒たちには言っとくんで、あんま遅くなんないでくださいよ』
「ん」
電話を切り、カメラを起動した。