合宿2日目-海-2
舞田の水着撮影会は、樋口が満足するまで続いた。
舞田も舞田で、二階堂に見せるためだと聞いてからはわりと協力的で、カメラマン樋口も納得の写真が撮れたらしい。俺も便乗して撮った。
「おつかれさま〜。はい、これ着て」
「ありがと」
樋口は自身の着ていたカーディガンを舞田に羽織らせた。濡れた体育着を着直した舞田は、今さらながら照れた様子だ。
「ちゃんと撮れた?」
「うーん、これは二階堂も大喜び」
「ほんとだ、よく撮れてるな」
「待ち受けにしよ〜」
「絶対やめて」
樋口は意外と写真を撮るのが上手かった。
*****
「うわっ、愛生さんどうしたんすかそれ」
「……波打ち際で転んだ」
宿に戻ると、不破と大田黒、それから何故か風舞の女子3人が俺たちを出迎えた。
「愛生先輩、お風呂入りましょう!」
「えっ、さっき入ったーー」
「入り直しです! 私たちも一緒に行きますからね!」
「ええ……」
風舞女子に連行されていく舞田を見送り、俺たちは部屋に戻る。
「おれも女子だったらな〜」
「ひぐっさんって、ぶっちゃけ愛生さんのこと好きなんですか?」
樋口のこぼした本気がどうかわからない願望に、不破は珍しくストレートにそう聞いた。
「ん〜、今はそういうんじゃないんだよなぁ」
「えっ。それって、前はそうだったっつーことすか」
「んー……なのかなぁって思ってたけど、彼氏いるの知ってたしねぇ」
「えっ!?」
樋口の返事を聞いた大田黒は何故か顔を赤くしていた。当の樋口は変わらずいつものゆるい調子で話している。
結局、恋愛というよりはこの親友的な関係がちょうどいいんだろう。俺もそうだ。
「まあ、舞田の見た目は好きだけど。かわいいし、おっきいし」
「やっぱり巨乳フェチだろ」
「違うってばー」
「ひぐっさん、それは説得力ゼロっす」
「そ、そういえば! 愛生さんは海で何をしてたんですかねえ!?」
身近な女子をネタにした話題に耐えかねた大田黒が、デカい声で話を変えた。
「あー。海に入ってみたかったんだって。舞田、初めて来たらしいよ、海」
「水が冷たかったからやめたって言ってたけど。ほら、舞田ってちょっと鈍臭いだろ。それで転んだって」
「にしても、あの夜道を女子1人でってのは危ないっすよね。二階堂のやつに知れたらと思うと」
「でもほら、"最終兵器"があるから」
「最終兵器?」
撮影会のことを知らない不破と大田黒は顔を見合わせて、揃って聞いてきた。
「そう。これこれ〜」
スマホ画面を見せた樋口は得意げだ。
「なんすかこれ!?」
ざっくり説明すると、何で誘ってくれなかったのかと悔しがる不破。そして大田黒は照れすぎて直視できていない。
「ちょ、ひぐっさん、それ俺にも送ってもらえません?」
「いいよー」
「一応舞田に許可取った方がよくないか?」
「それもそっか。まあ、二階堂に見せてあげようと思って撮ったやつだし、大丈夫だと思うけど」
「それ、愛生さんがよくても二階堂が拒否りそうっすね……」
肩を落とした不破を慰めるように、樋口は自身のスマホで写真を見せていた。
「てか愛生さん、もうグラドルでやっていけるでしょ、これ」
「だよねぇ。そうなったら、おれがファン1号になろうかな」
「おっ、じゃあ2号は俺っすね。って、グラドルなんて、二階堂が絶対許さないと思いますけど」
不破は笑ってそう言った。確かに。
*****
「舞田先輩は一緒じゃないんですか?」
二階堂はすでに風呂から戻ってきていた。俺たちが戻ったのを確認すると、真っ先にそう聞いてくる。
「愛生さんなら、風舞女子と一緒に風呂行ってんぜ」
「さっき入ってなかったか?」
「二階堂、経緯を説明させてくれ」
不破がそれとなくごまかそうとしてくれたが、二階堂に舞田絡みでのごまかしはそうそう効かない。1から説明した方が早いし、一番穏便に済ませられる。というか、隠すことでもないしな。
そういうわけで、舞田が今ここにいない理由を説明した。
俺と樋口の説明を聞いた二階堂は複雑な表情になる。まあ、その反応になるのはわからんでもない。
「写真送るから、ちょっと待ってね〜」
そんな機微を知ってか知らずか樋口は二階堂に声をかけ、スマホを操作した。
「写真もいいけど、やっぱ直接見たかったよなあ?」
「お前は見んな」
二階堂は樋口から送られた写真を真剣に見ている。そして不破がその画面を覗き込むと、二階堂はスマホを隠した。すでにその写真を俺たち全員が見ていることは、わざわざ言わなくてもいいだろう。
「二階堂〜、どれが一番好き?」
「全部に決まってるじゃないですか」
「答えんの早っ」