幕間
「清藤、もらってくれ」
「え、何急に」
「お前に似合う」
上等な布に包まれたそれは、これまた上等な青いとんぼ玉の簪だった。
明野を屋敷に住まわせて2日目の夜。
冨岡は胡蝶の助言通り、簪を明野に贈った。
「いや……貰えないよ。高級なものでしょう、これ」
「気に入らなかったか」
「そうじゃない」
胡蝶の言葉もあり断られるとは微塵も思っていなかった冨岡は、内心焦っていた。
「というか、女に簪なんて軽々しく贈らないほうが身のためだと思うよ」
「軽いものか。これを贈る意味も、俺は知っている」
明野は驚いた。女心など微塵も理解していなさそうな冨岡が、贈り物の意味などという洒落た事を知っていたとはこれ意外。
知っていて自分にこれが贈られたのだと理解すると、明野といえど冨岡の顔を直視できなくなっていた。端的に言えば、ものすごく照れた。
実際のところ、冨岡は遠い昔に姉から教わったことを思い出しただけであるが。
――義勇にも、贈りたい相手ができると良いわね。
……そう言ってくれた姉は、明野の存在を喜んでくれるだろうか。
冨岡はなにかぼんやりとした不安感に駆られた。
一方で、突然黙り込んだ冨岡に"またか"と思い明野は溜息を吐く。
「冨岡くん、生きてる?」
ぺしぺしと頬を叩かれて冨岡はハッとした。
それからすぐに明野の後ろに移動する。
「じっとしていろ」
「は?」
冨岡は、綺麗にまとめ上げられた明野の髪に、勝手に簪を挿した。
ちなみに白い項にもつい目が行ったが、なんとか手元に集中した。
「やはり、似合っている」
「…………」
明野は、冨岡が後ろにいてよかったと思った。とんでもなく顔が熱かった。
「……ありがとう、大事にするよ」
「ああ」
結局のところ、明野は結構単純な女である。