カナエ
※序盤の夢主がだいぶ尖ってます。
明野は単純で短気な性格だ。
それは彼女が入隊して間もなく知り合った、胡蝶姉妹からの評価だった。
言われるまで彼女自身にあまりその自覚がなかったのは、単に友人ができるような環境で育っていなかったからである。
胡蝶姉妹の姉、カナエは常に笑みを絶やさず温厚な人物だった。対する妹のしのぶは明野とは似た性格で、なんとなく気が合っていた。
「明野、また人を殴ったんですって?」
「あ? 向こうが舐めた口きいてくっからだろ」
「そんな乱暴な言葉遣いしないの。いつも言ってるでしょう」
「はっ、うちは先祖代々
頭の横で人差し指をくるくる回し、言外にバカだから治らないと主張する明野。
「なら明野の代で終わらせなさい!」
カナエは珍しく怒っていた。
いつも通り怒られてるな〜と思って眺めていたしのぶも、カナエが声を荒げたことには驚きを隠せなかった。
そして、それは明野も同じだった。
予想外のカナエの反応に調子を狂わされた明野は、困惑した。
だが狼狽したのも一瞬で、その態度は挑発的なものに変わる。
「なんだよいきなり……」
「私は心配しているのよ! そうやっていつも人と揉めて……無茶な戦い方もするし、傷の治療だって適当で――」
「……ああ、そうか。被験体がいなくなったら困るもんなぁ? ――わかったわかった。私も屋根がなくなったら困るから、お前の言うこと聞いてやるよ」
「本気で言っているの!?」
カナエは明野の肩を掴み、眼前に迫った。
明野にとってカナエはご主人様――というわけではなく、"ここに住むように"と産屋敷に言われた屋敷の主という認識だ。
カナエのことは、やれ口調だ態度だ治療だと、お節介で口うるさい奴だと思っていたものの、同い年なのによく働くすごい奴だとも思っていた。
それにカナエを嫌ってはいないし、なんならいつも大変そうだなと労わる気持ちくらいはあった。手が空いていれば家事を手伝ったり、ここに保護され働いている子供たちの話し相手もしていた。
ちなみに"ガキはうるせーから嫌い"だと口では言いつつも、危なっかしいところを見ていられずよく世話を焼いていた明野は子供たちには懐かれている。
しかし鬼殺隊に入るまでろくに人付き合いを経験していなかったがためか、頭に血が上ると本能的に喧嘩をふっかけてしまう明野。他の隊士と揉めることはもはや日常茶飯事であった。
カナエはそんな明野を気の毒に思っていた部分もあったが、怒らせるのは必定なので直接言ったことはない。しのぶがそれをはっきり言いそうになったときは慌てて口を押さえた。
明野は怒りさえしなければ比較的温厚な性格である。そして、褒められるのに慣れておらず意地を張って悪態を吐いたりするのは、他人との接し方がわかっていないからだとカナエは感じ取っていた。
だからこうして、明野の行動にはいちいち口を出すようにしていた。
「何が不満なんだよ。だいたいなんであんたが私を心配するわけ」
「あなたのことを大切な友人だと思っているからよ」
「……ゆうじん……?」
明野は驚きのあまり思考停止した。
そして数秒後、その言葉の意味を理解したとき――
「……っ、ゆ、友人……!?」
ものすごく照れた。