作戦会議
【義勇視点】
「作戦会議をする前に、いくつか聞かなきゃいけないことががあるわ」
胡蝶はいつも微笑みを絶やさず、穏やかな人物だと思っていた。今もその笑みは変わっていない。
しかし怒りが滲み出ている。
当時の状況を説明するように言われたから、そのまま伝えた。
「……清藤を見つけて、俺はつい……欲を、制御できなかった」
「どこで?」
「山……いや、森だ。任務の合流地点だった」
「そう……」
胡蝶の片頬がひくりと動いた。
「あのね冨岡くん。まず、いくらなんでも無理矢理はよくないわ。そもそも屋外、それも森だなんて。整備されていない自然の中には細菌がたくさんいるのよ? それから――」
俺は猛烈に胡蝶に怒られている。
清藤を手籠めにしたと思われているからだ。
よくも紛らわしい言い方をしてくれたな清藤明野……。
*****
その後なんとか説明して、手籠めにしたのではなく抱きしめてしまったのだと胡蝶に理解してもらうことができた。
そうであっても怒られたが。
ともあれ、話題は作戦会議とやらに移る。
「冨岡くんは明野のことをどこまで知っているのかしら? 同期なのよね?」
「ああ。だが、俺は彼女について何も知らない」
「知らないのに、一緒にいたいの?」
「……知りたい」
俺の答えに胡蝶は微笑んだ。それから清藤について、いくつかのことを教えてもらった。
彼女の両親や兄は鬼殺隊士だったという。そしてすでに全員鬼に殺されてしまっている。
清藤自身も家族から剣を教えられており、家族を殺した鬼の頸を自らの手で斬ったことが入隊のきっかけとなったと。
ここからが驚くべき点だった。
彼女は鬼舞辻無惨に遭遇したことがあるらしい。そして、奴の血を飲まされ鬼にされた。
「待て、清藤は鬼なのか」
「いいえ。明野は鬼舞辻の血を飲まされても鬼にならずに生き延びた、稀な体質の人間よ」
その彼女の体質、とりわけ血液が研究対象となり、蝶屋敷に住み込んでいるという。
正直、安心した。人間であるならば、清藤を斬らずに済む。
「でもね、この研究はここに住まなくてもできるのよ。だから冨岡くんのお屋敷で一緒に暮らしてみるのはどうかしら?」
「俺は構わないが、清藤は……」
「嫌がるでしょうね〜。しのぶもカナヲも寂しがるし」
「なら、何故……」
「これは私の勝手な願いだけど、明野に幸せになってほしいからよ。冨岡くんは、他の男の子とは違って真剣に明野のことを考えてくれているみたいだし」
「他の男?」
「ふふっ、そこに引っかかるのね」
……からかわれたのだろうか。
「明野は短気で強がりなところがあるけれど、とても優しい子よ。だから勘違いさせちゃうことが多いみたい。でも無自覚なのよね、まったくもう」
"冨岡くんが一緒にいてくれれば、虫除けにもなるわ!"と胡蝶は意気込んだ。
胡蝶は胡蝶で、俺の存在は都合が良いらしい。
「じゃあ、今日中に明野の荷物をまとめるわね。冨岡くん、できればお屋敷の1部屋を明野に貸してもらえないかしら?」
「ああ。部屋には余裕がある」
それからの胡蝶の行動は早かった。