幼馴染
……えっ。
「え、えぇー!? お、幼馴染!? いつから!? なんで!?」
素羽が俺の驚きをすべてを代弁してくれた。
「なんでって……あいつは、うちが引っ越した家の向かいに住んでてな。小学生のときからの付き合いだよ」
「えっ!? 付き合ってるんですか!?」
「へ? 付き合っ……ち、違うぞ! そういう付き合うじゃなくて……!」
「素羽、そのへんにしましょう」
「ご、ごめん、つい……」
「でも驚いたわ。忍田さんはさっき、池波くんたちの横を素通りしようとしてたように見えたけれど……」
「そりゃあ……な」
池波先輩は何か続けようとしたが、言葉を選んでいるのか、それ以上の返答はなかった。
「……あれ、忍田さんじゃないですか?」
ぽつりと呟くようにそう言った亜蘭。その視線の先には、確かに忍田先輩がいた。ちょうど校舎から出てきたところみたいだ。
俺たちが揃って見つめていたせいか、彼女もこちらに気づき、近くまで来ると足を止めてくれた。
「あれ、星輝くんまだいたんだ。もう帰っちゃったかと思った」
「お、おう……。あー、なんつーか、さっきは悪かったな。その、大丈夫か?」
「あー、別に大丈夫だよ。心配しすぎじゃない?」
「しすぎじゃない。それよりお前――」
「忍田先輩、モデルやめちゃうんですか!?」
――さすが素羽、ぶっ込んでいくな。
いきなり見知らぬ女子に詰め寄られた忍田先輩は、きょとんとしたまま素羽を見ている。
……あと、池波先輩がものすごくハラハラしている。めちゃくちゃ顔に出ていた。
「えっと、やめないよ?」
意外にも、何でそんなこと聞くの? みたいな反応をされた。
「は……? でもさっき……!」
池波先輩もさすがに驚いたのか、困惑を露わにしている。
「いやあ、だって、しおらしくしてないとまたネタにされちゃうかもしれないし」
あまりにも軽い返答に、俺たちの頭は一瞬フリーズしてしまった。
……だが、とりあえず言いたいことがある。
「ぜひ、学園祭の演劇に参加してください」
「た、確かに……! も〜、信じちゃったじゃないですかぁ!」
「あ、応援してくれてたの? ありがとう」
「さっきファンになりました!」
「アイツ切り替え速すぎじゃね?」
駿のツッコミは耳に入っていないのか、素羽は忍田先輩といつの間にか距離を縮めていた。
「……俺も、本気だと思っちまったぜ……」
池波先輩の悲痛な呟きが聞こえる……。
「あれ。ごめん、星輝くんは気付いてるんだと思ってた」
「お前なぁ……! マジで、あとで話あるからな」
「へ? あー、うん。あとでそっち行く? それともうち来る?」
「…………そっち行く」
「ん。じゃあ、待ってるね」
あまりにもあっさりした返答に、池波先輩は溜息を吐いてもはや諦めているようだった。
「待って真理奈先輩! 演劇、出てくれませんか?」
「うーん……炎上中の私が出たら、皆にも迷惑かかっちゃうだろうし、ごめんね」
「そっかぁ……」
素羽が残念そうに肩を落としたところで、今度は池波先輩が声をかける。
「お前が出たいと思うなら、俺は歓迎するぜ?」
「うん、ありがとう。でも星輝くん、やる気ない人とはやりたくないでしょ?」
「……まあな」
2人がもう一度誘ってくれたが、今度はかなりはっきり断られてしまった。
しかし、忍田先輩も立場的に今は目立ちたくないだろうし、誘いはこのくらいにしておいたほうがいいだろう。
「――さて、あの女性もいなくなったでしょうし、そろそろ帰りましょうか、皆」
理子の言葉にハッとして、俺たちは再び校門へ向かうことにした。
自然と池波先輩と忍田先輩が並び、その後ろを俺たちが着いて行く形になる。
「ていうかお前、さっきなんで1回校舎ん中戻ってったんだ?」
「あー、図書室に忘れ物してたの思い出して。ついでに裏門から出ようと思ったんだけど、もう閉まっちゃってたから引き返してきた」
「ふーん」
「あ、帰りスーパー寄っていい?」
「ああ。確か、卵が安い日だったか」
「そうそう。よく覚えてたね」
「昨日お前から聞いたんだよ」
……めちゃくちゃ普通の会話してるな。
「会話の内容、めっちゃ普通だね。なんか親近感湧いてきた!」
俺も、素羽に親近感が湧いてきたところだ。