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明さんを連れて屋根裏に上がり、コーヒーを用意した。
ちなみにモルガナは双葉のところに行っている。
雑談をしつつ、コーヒーも飲み終わろうという頃、モーションをかけてきたのは意外にも明さんの方だった。
「ところで、今日はこういう目的じゃないんですか?」
頬に手をそえて、少し動いたら唇同士が触れてしまいそうな距離まで顔を近づけられ、急な展開に俺は驚きで一瞬固まっていた。
「明さんがしたいなら」
「……君は?」
「したいけど、恋人になってからがいいな」
「恋人、ですか」
しれっと告白してみれば、明さんは意外そうに目を瞬かせた。
そのまま彼は近づけていた身を離す。
「だめなのか?」
「そうですね……今はちょっと。こう見えて、最近フラれたばかりなんです」
「えっ。恋人いたのか!?」
「といっても、暁くんと知り合う前ですけどね。告白されたらとりあえず付き合うのをやめろって、武見先生に注意されたので、実践中なんです」
「なるほど……。それにしても、やっぱりモテるんだな」
彼女にそんな注意をされるくらいだ、告白されたのも一度や二度ではないんだろう。
「どうでしょう。軽いと思われてるんじゃないですかね」
「俺はそうは思わないけど」
「そうですか?」
「ああ。さっきの告白もダメ元だったし」
「……暁くんは不思議な子ですね」
「そうか?」
「そうですよ。僕みたいなのを嫌がらないのもですけど、告白なんて。僕なんかにわざわざ優しくして、何か企んでるんじゃないかと不安になってました」
でも、と、俺が反論する前に明さんは言葉を続けた。
「そうじゃないんですよね?」
照れくさそうに目線を逸らしながらだったが、彼は確かにそう言った。
「わかってくれて嬉しい」
そう言ってもらえたことが嬉しくて、明さんと目を合わせてそう笑いかければ、彼の両目にじわりと涙のようなものが――
「あっ、いや、すみません、なんか急に、はぁ……今日だめだ」
それを確かめる前に隠されてしまった。
「大丈夫?」
「大丈夫です!」
適当に手で顔を拭った明さんは、開き直ったように宣言した。
「今のは、その……情けないおっさんの妄言なので、忘れてください!」
「――ふ、ふ、ははっ、おっさんって……その見た目で"おっさん"は無理だ……っ」
美人の癖に変な自虐をするからツボに入ってしまった。
「ええ……どこがおもしろかったんですか、今の……」