5
*****
俺がひとしきり笑ったあと、脱力する明さんと銭湯に行き、また屋根裏に戻ってきた。
「明さん、今日は泊まっていけ」
「遠慮がなくなってきましたね、暁くん……いいですけど」
いつかのように、というほど昔でもないが、狭いベッドに2人で入り込む。
明さんの身体をがっちり抱き込むと、ちょっと抵抗された。
「僕は抱き枕じゃないですよ」
「明さんもやっていいぞ」
「やりませんて……」
ちょっと笑った様子でそう返された。嫌がらないともっとやるぞ。
「あの、暁くん……今言うのもなんですけど、僕は……」
戸惑いがちに言う明さんは、下を向いていてその表情は見えない。
「昔からあまり、人を信用できなくて」
「……」
「でも君は――君と武見先生のことは信じられると、勝手にですけど……そう思ってるんです」
「……っ」
「うわ、ちょっと、苦しい」
思いっきり抱きしめると、明さんから苦しげな声が上がった。
「先生には昔からの恩がありますけど、君とは知り合ってからもそんなに長くないのに、何故か自然とそう思えてしまって。だから、さっき"不思議な子"って言ったのはそれも含めてです」
「そうか。……でも、それは不思議じゃない」
「どういうことですか?」
「俺は明さんに信用されたくて、猫被ってたりもしたけど、嘘を吐いたことはないし。それに、俺も明さんを信用してるから」
「…………えっと、うん、ちょっとよくわかんなかったです」
「えっ。……泣いていいぞ?」
「は? ……やっぱり不思議ですよ、暁くんは……その、良い意味で」
良い事言おうとして迷走したのは認めるけど。
"は?"はひどくないか。俺の方が羞恥で泣きそうだ。しかも今のはかなり素の反応だった。
最後に加えられた雑なフォローが余計に響いた。