1
少し前からストーカー被害を受けていたことが発覚した。
犯人を改心させるべく、密かに調査を始める。
*******
*****
【暁視点】
休日。マスターに言われて手伝いをしていると、明さんが客としてやってきた。
隣に住んでいるだけあって、昔から明さんを知っているらしいマスターは、来たばかりの明さんを見て訝しげな表情を見せた。
「落ち着かねえな。なんかあったのか?」
「えっ、いや……」
「まあ、言いたくねぇってんなら、無理には聞かねぇけどよ」
「……すみません、今はちょっと……ごめんなさい」
「いいけどよ。謝るのは禁止だっつったろ」
そう言って話を終わらせたマスターはコーヒーを淹れ始めた。
……俺は明さんの様子がおかしいことに一目で気付けなかった。
それに"謝るのは禁止"なんてルールも知らない。
「なんだよ、お前までシケた面してんな」
洗い物の手が止まっていたところに呆れた声が飛んでくる。
……マスター相手に嫉妬なんて俺もどうかしてるな。
いや、そんなことより明さんの様子だ。
おそらくマスターに言えないようなことで、何か悩んでいるようだ。
「明さん、俺で良ければ話聞く。もちろん、今じゃなくても」
洗い物をさっさと終わらせて、明さんの隣に座った。
「なに座ってんだ、お前。営業中だぞ」
「コーヒー頼む」
「お前なぁ……」
マスターは呆れながらも俺の分のコーヒーを出してくれた。
ちゃんとお代は払うので問題ない。
「そう言ってくれるのはありがたいんですけど……すみません、暁くんには言いづらいことなので、相談はできないんです」
「そ……そうか……うっ……じゃあ、しょうがないな……」
泣きそうになった。マスターに言えないんじゃなくて、俺がいるから言えなかったようだ。
いや、適当にごまかされなかっただけいい。
「あの、暁くんが頼りないとかじゃないですよ? ただその……」
「いや、いいんだ。きっぱり言ってくれた方が。でも俺はいつでも話聞くから、それは覚えててくれ」
気遣ってくれた明さんの手を掴み、詰め寄ってそれだけ伝えた。
明さんはのけぞって俺を避けつつ、わかったわかったと頷いた。