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少し前からストーカー被害を受けていたことが発覚した。
犯人を改心させるべく、密かに調査を始める。

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【暁視点】

休日。マスターに言われて手伝いをしていると、明さんが客としてやってきた。

隣に住んでいるだけあって、昔から明さんを知っているらしいマスターは、来たばかりの明さんを見て訝しげな表情を見せた。

「落ち着かねえな。なんかあったのか?」

「えっ、いや……」

「まあ、言いたくねぇってんなら、無理には聞かねぇけどよ」

「……すみません、今はちょっと……ごめんなさい」

「いいけどよ。謝るのは禁止だっつったろ」

そう言って話を終わらせたマスターはコーヒーを淹れ始めた。

……俺は明さんの様子がおかしいことに一目で気付けなかった。

それに"謝るのは禁止"なんてルールも知らない。

「なんだよ、お前までシケた面してんな」

洗い物の手が止まっていたところに呆れた声が飛んでくる。

……マスター相手に嫉妬なんて俺もどうかしてるな。

いや、そんなことより明さんの様子だ。

おそらくマスターに言えないようなことで、何か悩んでいるようだ。

「明さん、俺で良ければ話聞く。もちろん、今じゃなくても」

洗い物をさっさと終わらせて、明さんの隣に座った。

「なに座ってんだ、お前。営業中だぞ」

「コーヒー頼む」

「お前なぁ……」

マスターは呆れながらも俺の分のコーヒーを出してくれた。

ちゃんとお代は払うので問題ない。

「そう言ってくれるのはありがたいんですけど……すみません、暁くんには言いづらいことなので、相談はできないんです」

「そ……そうか……うっ……じゃあ、しょうがないな……」

泣きそうになった。マスターに言えないんじゃなくて、俺がいるから言えなかったようだ。

いや、適当にごまかされなかっただけいい。

「あの、暁くんが頼りないとかじゃないですよ? ただその……」

「いや、いいんだ。きっぱり言ってくれた方が。でも俺はいつでも話聞くから、それは覚えててくれ」

気遣ってくれた明さんの手を掴み、詰め寄ってそれだけ伝えた。

明さんはのけぞって俺を避けつつ、わかったわかったと頷いた。

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