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ルブランの手伝いも終わり、このまま明さんの隣でコーヒーを飲んでいようかと思っていたら、不意にスマホの着信音が鳴った。チャットが届いたようだ。
双葉『ちょっとうちに来てくれ』
双葉『お前の知りたいこと』
双葉『知れると思うぞ』
双葉からの連絡はそれだけだった。どういうことだ?
その疑問をそのまま送ってみると、
双葉『いいから来い』
双葉『明ちゃん帰ったら意味ない』
とのことだった。
そうだ、双葉は明さんのことを何故かちゃん付けで呼んでいるんだった。
どうやら明さん絡みで急ぎの用があるらしい。
"そうじろうにバレるなよ"という忠告をもらい、俺は友達のところに行ってくると言い残してルブランをあとにした。
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佐倉家の前に着くと双葉が玄関を開けて待っていた。
「早くしろ!」
なんだなんだ、今日は妙に急かすな。
双葉に従って彼女の部屋に通される。室内には何かの音声が流されていた。
少しの間黙ってそれを聞いていると、その音声がルブランの盗聴だということがわかる。
「これって――」
「そうじろうと明ちゃんの会話だ」
「なんで?」
「暁、明ちゃんの事情、知りたいんじゃないのか?」
「それはそうだけど……いや、俺には話せないって言ってたのに、勝手に聞くのはよくないだろ」
「…………」
そう反論すれば、双葉は少し考え込んだ。
そもそも双葉はなんでこんなことを俺に提案したんだろう。
双葉だって、人の知られたくないことを無神経に暴くようなやつじゃない。
「わ……私だって、別に嫌がらせでやってるんじゃないぞ!」
「ああ、それはわかってるよ」
「っ、そうか」
そのあたりの誤解はないことを伝えれば、双葉は安心したようだ。
「お前、この前言ってたよな。明ちゃんのこと好きって」
「え? ああ、うん」
以前双葉と明さんに面識があったことを知った日、ルブランの盗聴で俺が明さんにちょっかい出してたことを知っていた双葉に問い詰められたことがある。
その時に、双葉には俺の気持ちは伝えてあった。
「もう一度確かめるが、あれはホントだな? からかったりしてないな?」
「当たり前だ。そんな人の心を踏みにじるようなことはしないし、明さんの心ならなおさら大切に、それはもう割れ物、いや精巧なガラス細工を扱うがごとく――」
「わかった! わかったからもういいぞ。お前ちょっとコワイな……いや、わかってたけど……とにかく、ちゃんと確認したかっただけだ。――じゃあ、まずは理由を話す」