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少しして、御影さんは小さなポーチを片手に戻ってきた。

その中から小分けにされた袋を取り出して、いくつか渡された。

「……ヤバい薬じゃないですよね、これ」

「法的には"アリ"です。……誰かが誤飲しないように着色しただけで、元々はただの白い粉ですよ」

その言い方もなんだかな、とは思うが。

御影さんに渡されたのは、小さい頃に病院で貰ったような粉薬の見た目をした、パステルカラーの粉だった。

「味も甘くしてありますし、結構おいしいので飲みやすいですよ。まあ、そのせいで過剰に飲んでしまう可能性があるんですけど、そこは気を付けてくださいね。1回1包、用量は守ってください」

確かに、1包あたりの量も少ないし、これで味が良ければもう1包くらい――となりそうだ。気をつけよう。

「来栖くんが気にならなければ感想も聞かせてもらえると嬉しいんですけど、内容が内容ですから、気が向いたらお願いします」

「じゃあ、今から飲んでみます」

「わかりました。……えっ、今からですか!?」

いいリアクションだった。

「なら、僕はこれで失礼しますね」

「いや、怖いので一緒にいてください」

「いや、さすがにそれは」

「いや、そこをなんとか」

すでにソファから立ち上がっていた御影さんの腕を掴み、お願いする。

「本気ですか?」

「こんなこと御影さんにしか頼めないです」

「それはそうですけど…………うーん…………わかりました。少しだけですよ?」

「ありがとうございます!」

御影さん、自覚はあるようだけど、確かにチョロいかもしれない。


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パステルカラーの粉を飲んでから10分くらいが経った。

「多分もうそろそろだと思うんですけど、何か変化はありますか?」

「まだ、何とも……」

待っている間、俺は熱を測られたり、脈を取られたりしていたが、今のところ問題はないそうだ。

――と、思っていたら、何だか急に暑くなってきたような気がする。

「御影さん、なんか、俺……」

「もしかして、暑いですか?」

「はい」

「効き始めですね。3〜4時間程度で効果は切れるので、他に何かおかしいとか、気づいたら教えてくださいね」

そう言って今度こそ帰ろうとする御影さんを、俺はまた引き留めた。

「待って、御影さん」

「来栖くん?」

ソファに座っている俺に目線を合わせようとしゃがんだ御影さんは、心配そうにこちらを見ている。

「どこか具合が――」

「そうじゃなくて、俺、御影さんと、シたい」

薬で正常な判断ができていないのかもしれない、けど。

「僕は構いませんけど、来栖くんは後で後悔しませんか?」

「多分、しない。御影さん、綺麗だし」

「えっと、面食いでしたか? まあ、これでも見た目には気を遣ってますから」

「面食いじゃないけど、好きな顔だなとは思ってました」

「……それはそうと、本番は駄目ですよ? 今日は準備をしていないので」

「準備?」

「ええ。だから今日は手と口で、我慢してくださいね?」

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