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「次は何がいいですか? 何でも言っていいんですよ」
「…………」
「来栖くん?」
俺は御影さんの腕を掴み、彼の身体を強引に持ち上げてソファに押しつけた。
御影さんは特に抵抗はしなかったけど、その表情は少し困っている。
そんな顔をさせたいわけじゃない。俺はただ、されるばかりじゃ気が済まなくて、御影さんにも気持ち良くなってほしかった。
「あの、来栖くん……?」
「暁って呼んで。あと、御影さんの名前、教えて」
「え、あ、なんで――」
「嫌なのか?」
「いえ、そんなことはない、ですけど」
俺に見下ろされたまま、少し考える素振りを見せた御影さん。
「……明、です。名前」
「じゃあ、明さん。俺にも触らせてほしい、明さんのこと」
「え……」
「何でもしてくれるって言っただろ?」
見下ろした明さんは思っていたよりも小柄で、ソファに軽く押さえつけただけだというのに、俺はいつの間にか明さんを征服したような気分になっていた。
「来栖く――暁くんが本当にしたいなら、構わないですけど……いざやってみて、やっぱり男は無理だったとか、そういうのは嫌なんです。だから――」
「男が嫌ならとっくにやめてる。というか、俺は男とか女とかじゃなくて、明さんがいいんだ」
「媚薬のせいだとは思わないんですか?」
「それは否定できない。けど、思考とか全部が薬のせいでおかしくなったりはしないんだろ? なら本心だ」
それに、
「明さんも勃ってるし」
俺がそれを指摘すれば、明さんは恥ずかしそうに目を逸らした。
「もう……わかりました。"何でも言って"って言い出したのは僕ですし、来栖くんのしたいようにしてください」
その言い方だと何だか投げやりな感じもするが、とりあえず許可は貰えた。
薬を飲んでからもうだいぶ経つが、まだ効果は残っているようだ。本番は駄目だと最初に言われはしたが、それ以外なら明さんの様子を探りつつ試してみるとしよう。
明さんの両腕を解放し、彼の服を脱がしていく。
………………。
「明さん、よく俺に"大きい"なんて言えましたね」
ずり下げた下着から出てきたのはもちろん性器なわけだが、明さんのそれは俺のより、悔しいが大きかった。
思わず彼の顔と性器を交互に見てしまう。第一印象が"美人"だっただけに、予想外だ。脱いだらすごいとはこのことか。
「あ、の、それ、気にしてるから、あんまり見ないでほしいんですけど……」
「ご立派です」
「やめて!」
俺がついそう言ってしまうと、明さんは両手でそこを隠そうとした。しかしそこを握ることでまるで自慰でもしているかのように見えて、逆にエロくなっている。
そして大きさもそうだが、まだ他にも気になるところがあった。
「それはもう言わないから、身体もっと見せてください」
「見せてって、もう全部脱いでるじゃないですか」
「そうだけど、すごい、つるつるだ」
明さんの身体には全然毛が生えておらず、思わず触った太ももなんかもすべすべだった。処理したんだろう、めちゃくちゃきれいだ。
しかも意外と筋肉がついている。着痩せするタイプのようだ。もしかしてスポーツとかやってたんだろうか。全然想像つかないけど。
「も、もう、わかりましたから! 暁くん、眺めるのが趣味なんですか?」
「そういうわけじゃないですけど」
明さんの物足りなさそうな様子を見て、俺は彼の手をどかして性器に触れた。
俺とは違ってちょっと触ったくらいじゃそんなに反応してくれなかったけど、明さんがしてくれたように片手で上下に扱いてみれば、だんだんと腰が揺れ始めた。
しかし時々頭上で息の乱れる音は聞こえるが、気持ちよさそうな声は聞こえてこない。
それに空いてる方の手で自分のを扱いていたが、さっきまでの明さんから与えられていた快感には遠く及ばず、もどかしい。
「明さん、どうしたら気持ち良いんだ?」
「……教えましょうか?」
素直にそう聞けば、明さんは苦笑して、俺の手の上から自分の性器を握った。
「教えてください。……本当は自分でできれば良かったんですけど」
「初めてなんでしょう? わからなくて当然ですよ」
だから安心しろとでも言わんばかりに、俺の頭をぽんぽんと撫でてくる明さん。
「じゃあ、暁くん。僕の上に跨れますか?」
明さんに言われるがまま、ソファの上に膝立ちになり、彼の上に乗った。
向かい合わせの状態で乗ったから、当然お互いの性器同士がぶつかるわけで。
俺は無意識に腰を動かして明さんのものに自分のを擦りつけていた。
「ん、そう……そしたら、一緒に握ってみてください」
「こう……?」
2本まとめて握ったまま、さっきみたいに扱いた。なんともいえない感じだけど、少なくとも俺は気持ち良い。
明さんはどうなんだろうと思って見下ろすと、思ったより近くに彼の顔があった。
俺が見るのと同時に明さんも俺を見上げてたみたいで、ふと目が合う。
「上手ですよ、暁くん」
少し上擦った声で褒めてくれる明さんに、俺はたまらずキスをしてしまった。
「んっ、んん……!?」
明さんは驚いたみたいだけど、抵抗しなかった。
それどころか、俺のお世辞にも上手いとは言えないキスを教育でもするかのように、今度は俺が顎を軽く掴まれて、明さんの方から唇を合わせ直してきた。
「こっち、手が止まってますよ」
急に積極的になった明さんは、またキスをしてきたかと思えば、今度は舌を入れてきた。
しかも性器を扱くのも一緒に再開してきて、俺は心の準備が全くできていなかったせいでまた情けない声が漏れ出てしまう。もう出さなくて済むと思ってたのに。