怒った時に出るのが本性

「朝帰りですか、銀時。おかえりなさい」

「!」

背後からきこえてきた声に、銀時は恐る恐る振り向いた。

「梅、チャン……?」

完全に目が据わっていた。

――アッ、コレ、ヤベェやつだ。だってお兄ちゃんにクリソツだもん。

そんなことを思っている間に、銀時の背は一瞬にしてスナックお登勢の外壁に打ち付けられ、その衝撃で地面に尻をつく。そして、

「……銀時ィ」

「ハッ、ハイィッ!」

顔のすぐ横の壁に、梅の愛刀である鍔無しの真剣が鋭く突き立てられた。

「私ァただ壊すだけだ……この腐った天パを」

互いの鼻同士が触れるほど顔を近づけた梅は、実の兄である高杉晋助に似せた低い掠れ声で、兄のようなセリフを吐き、銀時の前髪を乱雑に掴み上げる。

「えっ、ちょっ、梅、待っ――」

銀時の制止を聞かず、そのままその天パ頭を勢い良く外壁に打ち付けた。

壁にめり込んだ銀時は動かなくなった。

「……銀時ー? 起きてますかー?」

銀時の意識の有無を確認し、無いことがわかると、

「服部さーん、こんな感じでどうですか?」

「おーバッチリバッチリ」

梅の声に、全蔵がビデオカメラ片手に屋根の上から現れる。

「――梅アンタ、女優にでもなったらどうだい?」

銀時の屍の真横にあるドアを開けて出てきたのはお登勢だ。

「これで懲りてくれれば良いんですけどね」

そう言う梅の表情には先ほどのような凶悪さは微塵も見られない。

「ま、いい画も撮れたんだ。コイツが起きる前に撤収しようぜ」

「そうですね。銀時もしばらくは帰って来ないでしょうし、私は万事屋で待機してますね」

「そうさな。……それと梅、余計な世話かもしれないがね、もしこのバカが懲りて帰ってきた時にゃ――」

「ふふ、わかってます。でも甘やかしすぎるとつけ上がりますからね、銀時は」

では、と梅は一礼し、万事屋のある2階へ上がっていった。

「ほんと、コイツには勿体無いよ、あの娘は」

お登勢はそう言って煙草を吹かし、店の中へと戻っていった。

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