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【梅視点】
銀時には反対されたものの、さすがに何かバイトでもしなければこの先食べていけないだろうことはすぐにわかった。
万事屋で働けば良いと銀時は言ってくれたが、給料未払いの事実は新八くんからすでに聞いている。
そういうわけで、とりあえず町の掲示板をみに来てみたのだが……。
「あ、兄上……と、小太郎……?」
みたことのありすぎる顔が、過激派攘夷浪士――テロリストとして指名手配されていた。
この顔に、ピンと来たなら、110番。……季語どうしよ。
いや、そんなことを言っている場合ではない。大体指名手配は年中されているものだから、これは"110番"を季語として扱えば――いや、そうでもなくて。
ピンと来すぎだ。
とはいえ、そもそも私は兄上たちを探しに江戸にやって来たのだ。どちらかといえば連絡が欲しいのはこっちである。いくら血縁者でもここで110番する意味はないだろう。うん。多分。
「ちょいとそこのお嬢さん、屯所までご同行お願いできやすかィ」
「え?」
後ろからかけられた声に振り返ると同時に、手首にかけられた手錠。
「銃刀法違反で現行犯逮捕でさァ」
そういえば、廃刀令、敷かれてましたね。
*****
真選組屯所、取調べ室。
「名前と、歳と職業」
「さ、坂田梅です。ええと、26歳で……無職です」
瞳孔の開いたチンピラみたいな人に取り調べを受けていた。
「26? 16の間違いじゃ――……まァいい」
「…………」
いや、いいですよ。別に気にしてないですよ。背とかもう十年くらい前から伸びてませんけど、若くみられたと解釈しますから。
そんなことより無職の方が問題だ。公務員相手に自称無職はさすがに恥ずかしい。
「あの、この刀はその……護身用というか、むしろお守りみたいなもので」
「護身用だァ?」
決して嘘は言っていない。が、信じてない。信じてない人の目だ。だって瞳孔開いてるもの。
「こ、今後は家に置いておきますから今日はどうか見逃してもらえないでしょうか……」
「……妙に急かすな。早く帰りてェ理由でもあんのか?」
「いや、帰りたいというか、職を探してまして」
「職?」
「はい。先週江戸に来たばかりなんですが、あんまりお金無くて、働き口を探してるんです」
「それなら――」
突然取調べ室の扉が開き、私を逮捕した栗色の髪の少年が入ってきた。
「ウチの女中でもやらせたらどうですかィ」
「駄目だ」
瞳孔の開いた人が即座に却下する。
「何でですかィ、土方さん。コイツならみてくれもそれなりでィ。隊士たちの士気も上がるってモンでしょ」
「……だとしても、攘夷浪士かもしれねェ奴を真選組で雇うワケにはいかねェだろ」
「え、私、攘夷浪士だと思われてたんですか?」
「ま、このご時世に帯刀してんのなんて、俺たちみてェな役人か攘夷浪士ぐらいなんでねィ」
「特に最近は浪士たちの活動も活発化してきてる。桂は大人しくなったみてェだが、今度は高杉だ。お前も手配書でみたことぐらいあんだろ。こっちはこっちで敏感になってんだ」
「土方さんよしてくだせェ。初対面の女に"敏感"とか下ネタ振るの」
「違ェよ! お前話きいてたァ!?」
「土方さんこそ俺の話きいてやしたかィ? このメス豚を俺の奴隷1号に――」
「いや何の話ィ!?」
土方さんと少年の喧嘩は続いた。
いや、それよりメス豚ってなんですか。私のことですかそれ。
……というか、だんだん喧嘩の趣旨がズレてきている。バズーカがどうのこうのとか、もはや私関係ないんじゃないだろうか……。
――と、そういえば。
「あの、すみません」
「あァ!? って、あぁ、すまねェ。取調べ中だったな」
「忘れてんじゃねーよ土方コノヤロー」
「テメーのせいだろうが!」
「それで、何かありましたかィ?」
言うだけ言って話をきかない少年に、土方さんは開いた瞳孔をさらに開かせていた。
「さっき高杉って言ってましたよね? 攘夷浪士の」
「ああ。それがどうかしたか?」
「ええ、私、その高杉の妹なんですが。双子の」
「そうだったんですかィ、そりゃ驚い――」
「「え?」」
さっきまで喧嘩していた土方さんと少年は、仲良く同時に固まった。