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【土方視点】
――今何っつったコイツ? 妹? 高杉の?
冗談もほどほどにしろ、と、思っていたが、
「……アンタ、よくみたら高杉のヤローにクリソツじゃねェですかィ」
そう、それだ。この坂田梅とかいう女、確かに似ているのだ、あの高杉に。
「あー……昔はよく言われましたね」
坂田梅は少し恥ずかしそうに頬を掻いた。
「じゃあその苗字はどういうことだ? "坂田"なんだろ、アンタ」
「あ、それは結婚相手が坂田さんだったので。旧姓は高杉です」
結婚してんのかよォォ!
何なのコイツ、高杉の妹なのに? 結婚とか出来ンの!?
……相手はイカレ野郎に違ェねェ。
ともあれ、
「真偽はともかく、そういうことならなおさらウチでは働かせられねェ」
「えっ、そんな……」
「ったりめーだろ。アンタはむしろしょっぴかれる側だ」
「いや、ちょっと待ってください、私は攘夷活動はしてませんし……というか、兄上がそんなテロリストみたいなことしてるのも今日しりましたし!」
「ンなこと信じられっか」
「まぁまぁ土方さん。コイツ、怪しいのは間違いねェが、ウソ言ってるって感じでもねェ。ここは一つ利用してみたらどうですかィ?」
「利用って……コイツをエサに高杉をおびき寄せでもする気か?」
「その通り。高杉の奴、案外シスコンかもしれやせんぜ? それに――」
総悟は突然刀に手をかけ、抜刀した。
キィン、と同時に響く金属音。
「ほら、みてくだせェ、土方さん」
「い、いきなり何を……」
総悟の刀を、坂田梅は自身の刀で受け止めていた。
「その刀、結構使い古されてるみてェだが、元攘夷志士ってトコですかィ?」
「ええ、そうですが……ていうかそろそろ刀下ろしてもらえませんか……!」
腕が痛い、とやや苦しそうに顔を歪ませる坂田梅。
元攘夷志士。確かにそう言った。そして高杉の妹であるとも。
ということは、
「……お前があの"鬼兵隊の子鬼"か……!?」
そうきくと、刀を下ろした坂田梅は恥ずかしそうな表情で、
「えっ、あの、それ、結構浸透してるんですか……?」
と言った。
「は?」
「あァ、"鬼兵隊の子鬼"ってヤツですかィ? それならしらねェ奴の方が少ないんじゃないですかねェ土方さん」
「あ? ああ、そうだな」
正直その異名がどれほど浸透しているかはしらねェが、まァ鬼兵隊の話が出たら"そんなのもいたな"的な感じで思い出すくらいには有名だ。
「えぇ、私それ嫌なんですよー……ちょっと弱そうじゃないですか? "鬼"って2回言ってるし……」
え、何このテンション。なんか落ち込んでるんですけど。
「"鬼兵隊総督補佐"とか"副総督"とか……なんか他にもそれっぽいのあるじゃないですか……!」
両手で顔を覆って沈んだオーラを放ち始めた坂田梅に、総悟も少し面食らったようだ。
「あらら。こりゃホントに今はただの女って感じですねィ」
「馬鹿野郎。ただの女がお前の剣なんざ受け止められるかよ」
「…………」
総悟は突然黙ったかと思いきや、何やら思案顔だ。ぜってェロクなこと考えてねェ。
「土方さん、良いコト思いつきやした」
「……何だ」
「この女、女中にしておくには勿体ねェや。隊士として働かせンのはどうです?」
「バカ言うな。真選組は女人禁制だ」
「土方さんだってみただろィ。並の隊士よりは、よっぽど腕が立つと思いますがねィ」
「それは……」
「それに、まだ疑ってるってんなら、雇えば監視もついでにできやすぜ。人妻なら隊士で男漁りもしねェだろうし」
まァ、確かにそうだ。しかし、
「あ、近藤さんに聞きゃいいのか」
「てめッ、何勝手に――」
総悟は俺の制止もきかずに――いつものことだが――近藤さんに電話をかけた。
「あ、もしもし近藤さんですかィ? 総悟でさァ」
「ハァ……許可出たらどうすんだコレ……」
溜め息を吐きつつ、坂田梅をみてみると、さっきまでの沈んだオーラはどこへやら、連れて来られた時のような困り笑顔を浮かべていた。
……変な女だ。