ショタコンお姉さんと銀時くん
【銀魂】坂田銀時(幼少期)/女主(松陽のお手伝いさん)
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塾での講義が終わり、塾生たちも帰った後。
亜依は縁側に腰を掛け、何やら真剣な面持ちで考え事をしていた。
「おや、難しい顔をしていますね。どうしましたか?」
その様子を見て、隣に座っていた松陽が尋ねる。
「……いけません」
「はい?」
「少年に着物や袴を着させるのはいけません!」
「…………」
松陽は、あぁまたか、と思いこれ以上口は出さなかったが、その後ろで亜依を警戒するように顔を覗かせる銀髪の少年――銀時は、訝しげな視線を彼女に向けていた。
「膝小僧の魅力というものは、少年にこそ備わる一瞬の輝きなのです。そう、例えば銀時くんくらいの年齢がベストです」
「……おい松陽」
銀時は松陽の着物の袖を引っ張った。
「銀時、今は亜依に構っては――」
「銀時くん!」
突然亜依に呼ばれ、ビクリと肩を揺らす銀時。
「銀時くんは、着物や袴以外の服に興味ありませんか?」
「…………ない」
「そうですか……残念」
しょんぼりとした表情の亜依に、銀時は若干の罪悪感を感じたが、
「――でも、私はすっごく興味あるんです」
亜依は銀時に迫った。
「ね、ね、銀時くん。ちょっとで良いんです」
「何がだよっ!」
「さ、一緒に部屋に行きましょう。お着替え手伝いますから。先生、楽しみにしててください」
亜依は銀時を抱き上げ、松陽に手を振った。
「は、離せっ、おい松陽! 助けろ!」
「銀時、人生諦めが肝心ですよ」
「裏切り者ォォォ!」
三人の暮らす住家に少年の叫び声が響いた。
*****
翌日。
塾での講義が終わり、塾生たちも帰った後。
亜依は縁側に腰を掛け、何やら真剣な面持ちで考え事をしていた。
「……またですか」
「あ、先生。銀時くんは?」
「部屋ですよ」
「行ってきます!」
「ほどほどにしないと嫌われちゃいますよ」
言って聞く性格ではないことは松陽が一番わかっているのだが。
ともあれ、亜依の向かった部屋には銀時一人。
「銀時くん! 何してるんですか?」
「げっ」
亜依は銀時の険しい表情を気にも留めず、珍しく机に向かう彼の手元を覗いた。
「勉強ですか?」
「松陽がやれってうるせーんだよ」
「へぇ。……あ、ここ間違ってますよ」
「お前、字ィ読めたのか」
「失礼ですねぇ。松陽先生に教わりましたから、一通りの読み書きは出来ますよ」
「……ふーん」
「教えてあげましょうか?」
「別にいい」
「相変わらず連れないですね、お姉ちゃん寂しいです」
「誰がお姉ちゃんだよ」
「銀時くんさえ良ければ、いやこの際銀時くんの意志は関係なく私の弟に来てほしいところなのですが」
「嫌だ」
「もう。じゃあ今度小太郎くんにお願いしてみようかな」
「は、ハァ? 何でヅラが出てくんだよ!」
「だって小太郎くんかわいいし、良い子だし……うーん、晋助くんも生意気なところがかわいいので選び難いですね……」
本気で考え始めた亜依に、銀時は溜息を吐きつつも内心では少し焦っていた。
どうして自分が焦っているのかは、このときの銀時にはまだわからなかった。