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「この際ですから、早漏克服トレーニングでもしてみましょうか」
「……私とて人の子だ。そうもはっきりと言われれば傷付きもするぞ」
グラハムさんはバツが悪そうに目線を逸らし、頭を掻いた。
「亜依……君はこういう時に限って強引だな」
意外な言葉だった。特にそんなつもりはなかったけど、なるほど、グラハムさんはそう思っていたのか。
「私がですか? どんな風に?」
「今まさにな」
「そうですか……?」
そんなことを話しつつ、私はボディソープを手に取り、素手でグラハムさんの鍛え抜かれた身体を撫でた。
「くッ、亜依! 急に触るなど……っ!」
「……失礼します?」
「畏まるな!」
「グラハムさん、筋肉すごい。さすがですね」
「人の話を聞きたまえ!」
「それ、グラハムさんにだけは言われたくないんですが……」
グラハムさんの腕を自分の胸で挟みながら言った。挟むといっても、そんなに大きくもないから全然挟めてないけど。
初めてのこんな行為に彼が唾液を飲む音が妙に大きく聞こえる。
「こっちも洗っちゃいますね」
急に触るなと言われた通り、宣言してからグラハムさんのソレを軽く握りつつ扱く。いつの間にかそれは腹に当たるほど反り返って、益荒男のごとく立派になっていた。
「まだ何にもしてないのに、グラハムさんおっきくしすぎです」
「言うな……っ、あっ、亜依、出、る……出るぞっ」
「あっ、まだイッちゃだめ!」
ホントに早いなと思いつつ、私は慌てて根元をぐっと押さえた。
「グラハムさん我慢ですよ、我慢」
「ぅ、ぐっ……私は……我慢弱いっ!」
そう言いつつも我慢するグラハムさん。その頬はもう真っ赤になっていて、風呂の湿気のせいもあるけど汗だくで、歯を食いしばっているのも、情けなく下がった眉尻も、細められた翠の目も、なんていうかすごく官能的だった。
なんでだろう、すごくどきどきするというか、ぞくぞくするというか。触られてもいないのに濡れてきてしまった。
こんなのはしたないし恥ずかしいと思うのに、腰は勝手に動いて太もももつい擦り寄せてしまう。
「いやらしい顔だな、亜依……」
「え?」
「鏡で自分の顔を見てみるといい。カタギリが見たら泣くな」
"カタギリ"というのは私の姓でもあるけれど、彼が言っているのは私の兄であるビリーのことだろう。
「もう、他の男の話しないでください」
「おや、カタギリに嫉妬したかな?」
そんな軽口を叩くグラハムさんは快感のピークを越えたようで、少し落ち着いてきていた。
「もっかいですよ。我慢してくださいね? 勝手にイッたらお仕置きですからね?」
「亜依、そんな言い回し、どこで覚えてくるんだ……?」
口元をひくつかせたグラハムさんを風呂場イスに座らせ、足の間にしゃがみこんだ。
全身についたボディソープはシャワーで洗い流す。そうしている間もグラハムさんのソレはまた大きくなっていて、どんな風に触ったら気持ち良いのかなあ……なんて考えていた。
「亜依、早く……」
ゆっくりと丁寧に流していたら、グラハムさんはとうとう我慢できなくなったらしく早く触れとお願いしてきた。我慢してって言ったのに。
あんまり焦らすのも何だかかわいそうだから、グラハムさんの望みどおりソレを触って、今度は舌を這わせた。
ちょっと舌で舐めあげただけで、グラハムさんとグラハムさんのソレはビクンと大きく反応した。つい可愛いなんて思ってしまったけど、口に出したら怒られるだろうから言わない。
「グラハムさん、もしかして感じやすいのかな? だからすぐ出ちゃうのかも」
「まさか。亜依の中が気持ち良すぎるんだ」
「まだ挿れてませんよ?」
「上の口も下の口も私にとっては名器なのだよ、君は」
「……え、えへへ、光栄です」
情けない照れ笑いが出てしまったのをごまかすように、再び舌を絡ませる。
先っちょだけを唇で挟んで、中で舌を暴れさせたりすると、グラハムさんはそれが良かったみたいで何度もイキそうになっていた。寸前で止めた時の我慢してる顔がもう最高で、クセになりそうだ。
「も、出すぞ……!」
「じゃあ、もっかい我慢してください。そしたらイッていいですよ」
こくこくと頷くグラハムさん。普段の自信に満ち溢れた表情なんてもうとっく消えていた。
片手で根元を押さえつつ、もう片方の手で竿を扱いたり、また舌を使ったりしていると、案の定グラハムさんは数分ともたずにイキたがった。
「はぁっ、ああっ、ぐっ……う、も、頼むっ、亜依、イカせてくれ……っ!」
そう言うと同時に、握った竿がビクンビクンと震えた。イッたのかと思ってそこを見たが、しかし精液は出ていない。
「グラハムさん、イキました?」
「ち、がうぞ……はぁっ、これは、俗に言う空イキというやつだ……くっ、痛いから一旦離し――」
痛いと聞いて、私は慌てて根元を押さえる手を離した。
「――んぐっ」
急に口元に押し付けられたグラハムさんのソレからは勢い良く大量の精液が噴き出す。
「ふっ、む、ごほっごほっ」
のどに当たる精液についむせると、顔の方にも白濁がかかってしまった。
突然のことにびっくりしていたら、イッたばかりのグラハムさんのソレが口の中に入ってきた。
「んっ、んん」
溢れ出してくる精液を必死に舐めとる。苦いし不味いけど、不思議と嫌な感じはしない。
「ん、はぁ……もう、グラハムさん出しすぎです」
グラハムさんは射精後の余韻に浸っているようで、荒い息を吐きながらも緩く自身を扱いている。
私はその手を取って、とりあえず私の両肩に乗せた。
「イッた後も触ると気持ち良いんですか?」
そう聞きつつ、まだ萎えきってはいないグラハムさんのソレを握る。
竿を軽く握って、片方の手のひらで先端をぐるぐると少し強めに擦った。
「っあ、やめろっ、亜依っ、あぁっ……!」
「グラハムさん、さっき勝手にイッちゃったから、お仕置きです」
どんな感覚なんだろう。教えて欲しいけど、グラハムさんはそれどころじゃないみたいだった。そんなに気持ち良いのかな。気持ち良かったらお仕置きにならないけど、まあいいか。
両肩を掴む手に力が入ってちょっと痛い。
それに気付いたのか時々力を抜かれるけど、またすぐに思い切り掴まれる。
「くっ……亜依っ、もう――」
さっき出したばっかりなのに。早漏で絶倫とは……。
「あっ、あ、はぁっ、っう、んん……っ!」
グラハムさんは上擦った声や、逆に苦しそうな低い声を漏らしてなんとか我慢しようとしていた。
だんだん目が虚ろになってきたグラハムさんに、ちょっとやりすぎたかもと反省するが、ここまできてしまっては最後までやり通さないと彼も辛いだろう。
「あ、亜依、も、出る、出すぞ……っ、いいだろっ? なぁ……!」
「ん、いいですよ……いっぱい出してください」
そう言って手のひらの動きを速めると、グラハムさんは少し腰を浮かせて、びくびくと震えた。
同時に手のひらに何かがかかる感覚。
精液ではない、透明な液体がたくさん噴き出してきた。
構わず竿を上下に激しく扱き続けると、それはもっと噴き出して、正面にいる私は全身に浴びてしまった。
「グラハムさん、これ、潮……? すごいいっぱい出てます」
「うっ、く、なんだ、これはっ、んんっ、ああぁ……っ」
なんだかよくわからないけど、声も我慢できなくなったらしいグラハムさんは気持ち良さそうだった。