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【K】草薙出雲/女主(伏見成り代わり)
・吠舞羅時代
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ある休日。吠舞羅のメンバー達は例の如くBAR HOMRAに溜まっていた。
閉店時間は過ぎているので客は来ない。
「お前らー、俺も帰るさかい、そろそろ帰り」
ソファの辺りで遊んでいる少年達に声をかけると、名残惜しそうな顔をしながらも帰り支度を始めた。
「伏見、お前もや」
正面のカウンター席に座り、頬杖をついている少女にも同じように声をかける。
すると、ある一点を見続けていた黒い瞳が俺を捉えた。
「――あ。伏見、今日時間あるか?」
「え?」
急に芽生えたいたずら心からそう聞くと、案の定亜依は訝しげな表情をした。
「まあ、ありますけど。……何ですか?」
「それは――」
言おうとしたところで、
「草薙さんさよーならー。亜依は――何か話してんのか。じゃーなー」
八田ちゃん空気読めや。
「おー、気をつけてなー」
「チッ……」
鎌本達とぞろぞろ店を出て行く八田ちゃんを見送ると、訝しげな表情が一瞬で不機嫌に変わる。
尊とアンナも2階に上がり、十束もブランケットにくるまってソファですでに寝ているので、店内には実質二人きりになった。
「……で、何ですか」
「すまんすまん。ちょお来てほしいとこがあってな」
「どこです?」
「それは着いてからのお楽しみや」
それだけ言って、亜依が着いてくるのを確認しながら店を出た。