2
*****
「ここや」
「……草薙さん家じゃないですか」
「せや」
肯定し、オートロックを解除してマンションに入る。
部屋の鍵を開けて、中に入るよう促すと、亜依の表情は訝しげなものから疑うようなものになった。
それでも素直に着いてくるのは、俺を少しは信用しているのか、ただ無防備なだけなのか。
「その辺座っとき」
亜依をリビングへ通し、俺はコーヒーを淹れるためキッチンへ向かった。
「砂糖入れるか?」
俺がそう聞くと、亜依は少しほっとした表情をした。苦いものは苦手らしい。……ダジャレとちゃうで。
「……はい」
カップを二つ持ってリビングに行き、亜依の隣に座る。
一応と、砂糖の袋を亜依に二つほど渡すと、少し躊躇った後、全部入れた。
なんとなくブラックを飲みそうなイメージがあったが、意外にも甘党だった。
――可愛えとこあるやん。普段からそれ前面に出せや。
と、思うわけだが。
しばらく何もせず、無音の中ただ座ってコーヒーを飲んだ。
「……それで、何の用だったんですか」
「何やと思う?」
「……」
こいつ、面倒くさそうな顔しよった。
「ま、ええわ。寝室行こか」
「は? ――え、ちょっと」
亜依の手を引き、寝室――といってもリビングの隣だが――へ連れて行く。
部屋に入り、亜依をベッドに押し倒す。
「草薙さ――」
「こないな事になるって、予想せえへんかった?」
ぐっと顔を近づけて、そう問う。
「……」
……予想はしていたが、まさか実行されるとは思っていなかった、といったところだろうか。
「なんや、えらい冷静やな」
「別に、冷静じゃ、ないですけど」
顔に出てないだけで、と亜依は続けた。
「……なら、いつまで持つかやな?」
そう言って、服の上から亜依の胸に優しく手を滑らせた。
「――っ」
亜依はびくりと肩を揺らし、一瞬だけ怯えたような表情を見せた。
「伏見、初めてか?」
「そうですけど……」
「経験済みかと思ってたわ」
「……歳考えてください」
……そういえば、学校もこの前卒業したばっかりやったっけ……?
「――いやでも、最近の子供ってマセてるやん」
「まあ、経験済みの奴もいるにはいましたけど――」
「せやろ!?」
「なんでそんな必死なんですか……」
この目は、哀れみだろうか。……アカン、7歳も年下の子供に哀れまれたわ俺。
「――そういうことは状況見てから言うんやで、亜依ちゃん」
「は、ちょ、何も言ってな――」
亜依の細い腕では俺の力に敵うはずもなく、じわじわと赤みを増していく白い頬を眺めながら、パーカーとシャツを脱がしていく。
白く滑らかな肌と、同じく白い清楚な下着、そしてそこに映える赤い徴。
「伏見、お前外出とるか? 肌白過ぎやろ。アカン、不健康や。夏んなったら皆で海行くで」
「え、嫌ですよ!」
脱がされるのは良くても、海に行くのは良くないのか。
「……大体、今してることのほうが不健康でしょう」
「不健康やない、不健全や。いや、運動にもなるからむしろ健康的やで」
「……」
舌打ちこそしないが、表情はそれに等しい。
……折角可愛え顔しとんのやし、笑うたらええのに、と。
思うわけだが、である。