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「ここや」

「……草薙さん家じゃないですか」

「せや」

肯定し、オートロックを解除してマンションに入る。

部屋の鍵を開けて、中に入るよう促すと、亜依の表情は訝しげなものから疑うようなものになった。

それでも素直に着いてくるのは、俺を少しは信用しているのか、ただ無防備なだけなのか。

「その辺座っとき」

亜依をリビングへ通し、俺はコーヒーを淹れるためキッチンへ向かった。

「砂糖入れるか?」

俺がそう聞くと、亜依は少しほっとした表情をした。苦いものは苦手らしい。……ダジャレとちゃうで。

「……はい」

カップを二つ持ってリビングに行き、亜依の隣に座る。

一応と、砂糖の袋を亜依に二つほど渡すと、少し躊躇った後、全部入れた。

なんとなくブラックを飲みそうなイメージがあったが、意外にも甘党だった。

――可愛えとこあるやん。普段からそれ前面に出せや。

と、思うわけだが。

しばらく何もせず、無音の中ただ座ってコーヒーを飲んだ。

「……それで、何の用だったんですか」

「何やと思う?」

「……」

こいつ、面倒くさそうな顔しよった。

「ま、ええわ。寝室行こか」

「は? ――え、ちょっと」

亜依の手を引き、寝室――といってもリビングの隣だが――へ連れて行く。

部屋に入り、亜依をベッドに押し倒す。

「草薙さ――」

「こないな事になるって、予想せえへんかった?」

ぐっと顔を近づけて、そう問う。

「……」

……予想はしていたが、まさか実行されるとは思っていなかった、といったところだろうか。

「なんや、えらい冷静やな」

「別に、冷静じゃ、ないですけど」

顔に出てないだけで、と亜依は続けた。

「……なら、いつまで持つかやな?」

そう言って、服の上から亜依の胸に優しく手を滑らせた。

「――っ」

亜依はびくりと肩を揺らし、一瞬だけ怯えたような表情を見せた。

「伏見、初めてか?」

「そうですけど……」

「経験済みかと思ってたわ」

「……歳考えてください」

……そういえば、学校もこの前卒業したばっかりやったっけ……?

「――いやでも、最近の子供ってマセてるやん」

「まあ、経験済みの奴もいるにはいましたけど――」

「せやろ!?」

「なんでそんな必死なんですか……」

この目は、哀れみだろうか。……アカン、7歳も年下の子供に哀れまれたわ俺。

「――そういうことは状況見てから言うんやで、亜依ちゃん」

「は、ちょ、何も言ってな――」

亜依の細い腕では俺の力に敵うはずもなく、じわじわと赤みを増していく白い頬を眺めながら、パーカーとシャツを脱がしていく。

白く滑らかな肌と、同じく白い清楚な下着、そしてそこに映える赤い徴。

「伏見、お前外出とるか? 肌白過ぎやろ。アカン、不健康や。夏んなったら皆で海行くで」

「え、嫌ですよ!」

脱がされるのは良くても、海に行くのは良くないのか。

「……大体、今してることのほうが不健康でしょう」

「不健康やない、不健全や。いや、運動にもなるからむしろ健康的やで」

「……」

舌打ちこそしないが、表情はそれに等しい。

……折角可愛え顔しとんのやし、笑うたらええのに、と。

思うわけだが、である。

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