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どうやら亜依は、オレが帰ってくるのを待って、まだ夕食を食べていなかったらしい。
先に食べていても良かったと言えば、オレと一緒に食べたかったのだというなんとも可愛らしい返答を貰った。
夕食を終え、食器を食洗機に入れた後、向かうのは風呂である。
「おにーちゃん、いっしょに入ろ!」
「ああ」
自分のパジャマとオレの分の着替えを抱えて、風呂場を指差す真琴。
一緒に風呂に入ることも今や日課となっている。
だがこれはちょっとした試練である。
以前一緒に入ったとき、不覚にも勃起してしまったことがあるのだ。
亜依にはそれがどういう現象なのかまだわかっていなかったようなので、男はみんなこうなるのだといういつまで持つかわからない言い訳をしてその場をやり過ごした。
亜依は不思議そうな顔をしていたが、それほど気にしていない風に見えたので、そのままそういうことにしておいたが、それが間違いだったのだろうか。
後日クラスの男子によりその知識を得た亜依は、恥ずかしそうに、遠慮がちにこう言ってきた。
「あのね、おにーちゃん。このまえ、いっしょにおふろ入ったとき、おにーちゃんの、お、おちんちん、かたくなってた、よね?」
幸い両親は側にいなかったが、このときオレはこの世の終わりのような絶望に打ちひしがれていた。これはまずい、と。
「クラスの男の子がね、こうふんしたときにそうなるって言ってたの。……おにーちゃん、こうふんしたの?」
これが子供の恐ろしさである。オレはそれを身を持って知った。
「ああ……興奮、したのだよ。妹相手になど、気持ち悪いと思うだろうが」
亜依に嫌われるかもしれないと思うと、自然と声が震えた。
「きもちわるくない!」
「な……」
「おにーちゃん、きもちわるくないもん」
珍しく亜依が大声を出したかと思えば、腰の辺りに抱きついてきた。顔を見れば拗ねたような表情をしている。
つい反射的に頭を撫でてしまった。
「……亜依」
「おにーちゃんが、きもちよかったら、亜依もきもちいいもん」
「き……気持ち良い、だと?」
思わず聞き返してしまった。
別にアレは気持ち良い状態ではないし、対処のしようがない場合むしろ苦しいくらいである。
「え? だって、クラスの子、気持ちいって言ってたよ……?」
最近の子供は随分と進んでいるのだな……。