D-2
【新八視点】
前ページのようなことがあってから一週間。
万事屋のソファには、件の少女が座っていた。
「あの、私、真選組の、こ、近藤#name2#と申します。先日はご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
少女――近藤#name2#さんが深々と頭を下げる。
「申し訳ありませんでしたっつってもね〜、失われた休日は戻って来ないんだよね〜」
向かいに座る銀さんは鼻クソをほじりながらそう言った。年中休日のクセに何言ってるんだまったく。
「ちょっと銀さん! わざわざ謝りにきてくれてるんですよ?」
「あ、これ、お、お詫び、なんですけど……」
どもりつつも謝罪する#name2#さんは、銀さんたちにいかにも高そうな菓子折りを差し出した。
「え、貰っちゃっていいのコレ?」
菓子に食い付く銀さん。恥ずかしくないのかアンタ。
「ンだよ〜こんなん貰えンなら毎日御用改めてくれていいのによ〜」
「銀さん、アンタプライドないんですか」
「いいじゃねェか御用改めくれェよ。#name2#チャンだっけ? いつでも来いよ」
「最低アルな。その菓子寄こせヨ」
「いやお前も変わんねーよ」
ダメ人間たちにため息をついていると、#name2#さんが恐る恐るといった感じでこちらを窺っているのに気付いた。
「すみません、この人たちほんとダメで」
「あ、い、いえ、悪いのはこちらの、方なので」
「つか、オメー何そんなビビッてんだよ」
「銀さん、#name2#さんは人見知りだって、この前近藤さんが言ってたじゃないですか」
「そうだっけ? 俺ゴリラ語わかんねェから」
僕だってそんなもん知りませんよ。というか、
「そういえば、#name2#さんも苗字"近藤"なんですね」
「え? あ、はい。近藤局長は私の兄上ですから……」
……え?
「#name2#、ゴリラの妹だったアルか? 突然変異アルか!?」
「ゴ、ゴリラ、ですか?」
「ちょっと神楽ちゃん! 近藤さんの身内に向かってゴリラは――」
「ふふっ、確かに、ゴリラ、似てますね……!」
「え?」
#name2#さんは銀さんや神楽ちゃんに実の兄である近藤さんのことをゴリラ呼ばわりされて笑っていた。
「#name2#は笑ってた方がかわいいアルな!」
「そーそー。女の一番の化粧は笑顔って言うだろ? 笑っとけ笑っとけ」
「いや……何イイ話風に締めようとしてんですかアンタら」
まあ、確かに笑ってた方がかわいいというのには賛成だけど。
その後は#name2#さんの緊張もだいぶ解れたみたいで、冗談なんかも言ってくれるようになった。元々は近藤さんのような、というと誤解を招くかもしれないけど、ともかく明るい性格なんだろう。
僕の周りにもやっと常識人が現れたんだ、それに#name2#さんとは年も近そうだしもっと仲良くなりたいと思った。
そして#name2#さんがやって来てから1時間くらい経ち、彼女はそろそろ帰らないと土方さんに怒られるからと言って帰ってしまった。
「多串くんも過保護だな。ま、気持ちは分かンなくもねェけど」
「でもまだ17時前アル。かぶき町はここからが本番ネ」
「オメーは夜のかぶき町を知ってから言えよ」
銀さんと神楽ちゃんのそんな会話を聞きつつ、僕は#name2#さんのことを思い出していた。
……かわいかったよなァ……。
最初のちょっと緊張気味だった#name2#さんも、小動物っぽくて守ってあげたくなる感じだ。いや、真選組にいるくらいだから、もしかしたらああみえて強いのかもしれないけど……。
「ンだよぱっつぁん。締まりのねェ顔しやがって。惚れたか?」
「なっ、何言ってるんですか!? 違いますよ!」
ニヤけ面の銀さんには、反射的にそう返してしまったけど……僕は#name2#さんに惚れてしまった、のだろうか?
「オイオイ新八、あの娘は多分手強いぜ? 本人はともかく周りがアレだ」
「だから、違うって言ってんでしょーが」
「いやァ、今回のは俺確信したね」
「……僕、買い物行って来ます」
これ以上喋るとボロが出そうだ。僕は急いで玄関に向かった。
というか、終始黙ったままの神楽ちゃんから向けられる蔑みの視線から早く逃れたかった。