@ 持つべきものは
【#name2#視点】
――デザインが好みってだけのノリで買った水着を、まさか実際に着るときが来るなんて。
入須先輩からの依頼を終えた夏休み終盤、福部の誘いで市民プールを訪れた。
プールなんて普通なら誘われても断るところだが、"面白いものが見られる"と言われ考えた。まあ、それだけなら行く理由にはならなかったが、福部もわかっていたんだろう、"ホータローの面白い姿が見られる"と付け加えた。
それは見に行かなければ、と、クローゼットから水着を引っ張り出したのだ。
シンプルなネイビーのビキニだ。完全に人前で着ることは想定していなかったが……一応、家で試着はしたからサイズは問題ない。露出は気になるが、まあ上着を着ていればいいだろう。
それに、今回は遊びではなく折木を見に行くのが目的だ。
*****
市民プールはそこそこ賑わっていた。
「……私は後悔しています」
「なんでポンコツ翻訳機みたいな喋り方なのよ」
更衣室で各自着替えを終えると、摩耶花は律儀にツッコんだ。
「どうしてですか? 水着、とっても似合っていますよ」
「あ、ありがとう……」
えると摩耶花も似合ってる。
そう言葉を続ければ、2人とも笑ってくれた。
「……にしても、一体何を食べたらそんなスタイルになれるのかしら」
プールに繋がる廊下を歩いていると、そう変わらない身長の摩耶花は私の顔を覗き込んできた。
えるも言葉には出さないが、目線が私の胸部を捉えている。摩耶花はともかく、えるは結構ある方と思うんだけど。
「良く見えるだけだよ。重いし、汗で蒸れるし、足もと見えないから段差に弱い」
「あ、それでよく躓いてたのね」
摩耶花は納得の表情を見せた。というか、よくコケる奴だと思われてたんだ……。
「あっ! #name2#さん、そこに段差がーー」
「えっ」
コケた。
*****
プールサイドに出ると、福部が待ち構えていた。
そしてその向こう側には折木の姿も見える。監視員用の高い椅子に座ってぼーっとしているようだ。ダルそう。
「やあ#name1#さん。さすがの着こなしだね。その姿を見たらホータローもイチコロさ」
「ほんと?」
「もちろん」
福部はこそっと耳打ちしてきた。私が折木のことを好いているのはみんな知っているが、中でも福部は協力的だ。
ありがたいけど、私より摩耶花に構ってあげてほしくもある。
ともあれ、4人揃って近くまで行くと、折木もこちらに気付いたようだ。
折木の視線は、まず先頭にいたえる、その後ろの摩耶花と福部、そしてその後ろにいた私にも向けられた。
目が合ったので、とりあえず両腕を寄せて谷間を強調してみた。
折木は少し目を見開き、口をへの字に曲げた。そしてふいっと顔を逸らす。照れているのかもしれない。作戦成功だ。
「なにしてるのよ……」
「誘惑」
「場所を考えなさいよね!」
摩耶花の私に対する態度は、割と対折木寄りな気がする。同性だからかいくらか軟化してはいるが。
「まあまあ。#name1#さんに変な虫がつかないかって、摩耶花は心配してるんだよ」
そうなの? とは思ったが、福部が言うんだからそうなんだろう。
「折木は変な虫じゃないから大丈夫」
「じゅうぶん変よ!」
誰が変な虫だ、くらいの反論くらいはあるかと思ったら、折木はこちらをぼーっと眺めるだけだった。
その様子に言及しようとしたが、福部を筆頭にプールの方へ3人は歩き出していた。
「お前は行かないのか?」
はやく、とえるたちに呼ばれている。
「行くよ。……折木、調子悪い?」
「悪かったらバイトなんかしない」
「あ、そっか。」
最後里志の腕を掴んで引っ張って行く摩耶花。
それを見て「これだ!」と思い奉太郎の腕を固める#name2#