C サイドエフェクト
【あい視点】
開発室で鬼怒田さんたちとわたしのトリオンについて話していると、思い出したように忍田さんが口を開いた。
「君はそのトリオン量で今まで
「えっと……小学生の頃に何回か。でもすぐに走って逃げたらなんとかなって……あれ、そういえば、ここ数年は全然……?」
わたしのトリオンが人並外れた数値であることから、今まで危険な目に遭わなかったことを疑問視されたようだ。
しかし、それには鬼怒田さんが答えた。
「サイドエフェクトの影響だろう。これだけのトリオンがあれば、持っとらんほうが不自然だ」
「サイドエフェクトって、迅さんみたいなやつですか?」
迅さんは未来が視えると言っていたが、わたしはそんな特殊能力に心当たりがなかった。
「ああ。だが一口にサイドエフェクトと言っても、種類がある」
鬼怒田さんによると、サイドエフェクトは"優れたトリオン能力を持つ人間に稀に発現する能力"とのことで、あくまでも人間の能力の延長線上にあるものだという。
例えば空を飛んだりとか、そういった魔法のようなものではないらしい。
その能力も希少性でランク分けわれているらしく、迅さんの"未来視"は最も希少なSランクとのことだ。というか、未来が視えるって、人間のどの能力を延長させたらそうなるんだろう。洞察力とか想像力か……それとも逆に第六感みたいな? わからない。
「迅さんも大変ですね……」
わたしの異常なトリオン量と同じように、別に欲しくて得た能力ではないだろうし。それでいつも忙しそうにしているのだから、なんだか気の毒だ。
ついそうこぼすと、忍田さんたちは少し申し訳なさそうな表情になってしまった。
「あっ、ごめんなさい……よく知らないのに、つい」
ボーダーにも事情があるだろうし、入隊したばかりの新人が口を出すべきじゃなかったかもしれない。
「いや、いいんだ。私としても、迅にはもう少し休んでもらいたいと思っていたからな」
「あいつもまあ、好きでやっとるんだろう」
忍田さんと鬼怒田さんも、迅さんが忙しく動き回っていることは知っているらしい。鬼怒田さんの言葉はそっけないが。
「――それより、今はあいちゃんのサイドエフェクトの話だ。どうもトリオン兵から逃れられていたことに関係しているように思えるが……」
鬼怒田さんは軽く咳払いをして、話を戻した。
「気配を消す能力とか?」
「逆に、トリオン兵の気配がわかるとかはどうかしら?」
太刀川さんと月見さんの考察はどちらもピンと来ず、わたしは頷けなかった。
……おそらくその2つができるのは、わたしではないだろう。
わたしの妹ーー千佳は、よく"大きな怖いものが追ってきた"と言って兄やわたしに泣きついていた。
いつからかやり過ごす術を身につけたようだったが、あれはサイドエフェクトで身を守っていたんだろうと、今の話を聞いて考えた。
わたしの場合はここ数年追われること自体がなかったし、気配がわかるわけでもない。だから多分、千佳とは違うタイプの能力なんだろう。
*****
結局、わたしのサイドエフェクトの詳細はわからず、いったん保留ということになった。
この後は会議室に呼ばれているため、太刀川さんと月見さんとは開発室前で別れる。
忍田さんと鬼怒田さんは先に会議室に向かい、わたしは忍田さんが連絡をつけてくれたらしい林藤さんを待っていた。
開発室前で少しの間待っていると、すぐに林藤さんは現れた。
「悪い悪い、遅くなった」
「いえ、わざわざすみません」
「じゃ、行くか」
わたしは頷いて、林藤さんの後を追った。