C-5 出会い

「あ、あの、あなたはどこのユニットに所属してるんですか……!?」

そう言ってキラキラした目で私を見つめてくる女子――あんず先輩。

「……私、プロデュース科なんですけど……」

「えっ!?」

あんず先輩は、持っていたスクールバッグを落とした。

*****

夢ノ咲学院のプロデュース科に転校して1週間。

今日は『Knights』というユニットのプロデュースをすることになっていた。

ユニットコンセプトは騎士だという。クラスメイトの朱桜くんが所属しているが、他のメンバーは資料で見たのみだ。

私はプロデュース自体が初めてだから、同じ科のあんず先輩が付いてくれるということで、先にレッスン室で待っていた。

レッスン室の利用は時間予約制だが、先客がいなければ先に入室してもよいと椚先生に聞いていた。だから先に来て『Knights』のパフォーマンスについて予習をしていたのだ。

プロデュースをさせてもらう以上、何も知らないで始めるわけにはいかない。楽曲と振付なんかも先にもらっていた資料を見て頭に入っていたから、1度自分で踊ってみながら確認していたところにあんず先輩が現れた。

実のところあんず先輩とは初対面である。お互い存在自体は知っていたと思うが、顔を合わせたのは今日は初めてだった。だからって、アイドル科の生徒と勘違いされるとは思ってもみなかったけど。

ともあれ、まずは自己紹介か。

「プロデュース科1年の浅上ユリです。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね」

それからあんず先輩と一緒にプロデュースの準備や段取りの確認をしていると、レッスン室に数人の男子生徒が入ってきた。『Knights』のメンバーだ。

「あら、その子が新しいプロデューサーの子かしら?」

「なんと。今日は浅上さんがproduceをしてくださるのですね!」

朱桜くんと、モデル体型の金髪のお兄さんが早速話しかけにきてくれたが……第一印象とは裏腹に、なんというか、ものすごく物腰が柔らかかった。そして他の2人もやってくる。

「初めまして。プロデュース科1年の浅上ユリです。よろしくお願いします」

「よろしくね♪ アタシは鳴上嵐、あんずちゃんと同じ2年生よ」

鳴上先輩は面倒見が良いタイプなのか、他のメンバーも紹介してくれた。初対面の2人は、2年生の凛月ちゃんと3年生の泉ちゃんというらしい。いやフルネームは? 資料で見たから知ってはいるけど……。

「紹介ありがとうございます。ええと、朔間先輩と瀬名先輩ですよね。よろしくお願いします」

「俺のことは凛月でいいよぉ……」

朔間先輩は眠そうにそう言って目をこすっている。そういえば、3年生にも朔間先輩がいたような、と思い出した。

「アタシのことも、気軽に"嵐ちゃん"って呼んでもらえると嬉しいわァ」

「わかりました」

「ちょっとぉ、いつまで自己紹介続けるつもり? 時間がもったいないから、さっさと始めるよ」

「もう泉ちゃんてば、初対面なんだから挨拶くらいいいじゃないの」

うんざりした様の瀬名先輩。言うことはもっともだったから、早速レッスンを始めることにした。

*****

まず1度、Knightsのパフォーマンスを見せてもらった。

七種先輩は、夢ノ咲でのプロデューサー業は企画などだけではなく、レッスン時のトレーナー業務を請け負うことになるだろうと予測していた。だから事前にノウハウを叩き込まれたときも、こういうときどこに注目して見るべきかを教わっていた。当時はマジか〜と思っていたが、なんだかんだで感謝せざるを得ない。

「ユリちゃん、どうだった?」

と、あんず先輩が聞く。

「……個々のレベルは、夢ノ咲の他のユニットに比べて高めだと思いました」

心なしか瀬名先輩からの視線が刺さる。

「あとは全体のまとまりみたいな部分が締まれば、もっと良くなるんじゃないかと思います」

朱桜くんと嵐ちゃんはなるほどねと頷いてくれたが、凛月先輩は相変わらず眠そうだし、瀬名先輩は腕を組んで眉間にしわを寄せている。

「あんたの言う"全体のまとまり"って、具体的にどんなの? 抽象的すぎていまいち伝わらないんだけどぉ?」

瀬名先輩は軽くため息を吐いてそう言った。

「えっと……とりあえず今気になったのは、立ち位置のズレとハモリの音程です。あ、あと表情の険しさ……とか」

「"とか"? あとは?」

物理的にも迫り来る瀬名先輩のあまりの圧の強さに、思わずあんず先輩の方を見た。がんばれ、と言うようにサムズアップしている。そうじゃない。この人はいつもこんな感じなのか、それとも今日は特別ピリピリしているのか聞きたかったんだけど……。

「あとは……微妙にテンポがずれてる、というか遅れてる人がいます」

「誰」

「朱桜くん……ああ、いや、でも、本人自覚してると思うんで、練習積めば大丈夫かと……」

朱桜くんも遅れたところは"まずい"って感じが顔に出ていたし。

「……ふうん。わかった。じゃ、しばらく個人練。最後にもう1回通しでやるから」

「あ、はい」

「あと、さっき気になるって言ってたとこ、リストアップしといてよねぇ」

「わかりました。ノートにまとめるんで、5分もらえますか?」

瀬名先輩は頷いて離れていく。私が改善点をまとめている間、Knightsのみなさんはいったん休憩となった。

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