C おひいさん

※アホ話です


【ユリ視点】

サマーライブのプロデュース以降、巴先輩からちょくちょく呼び出されるようになった。

理由はわからない。Eveのレッスンを見ていろという時もあれば、巴先輩の個人練のときもある。今日は個人練の日らしい。

意見や感想を求められるときもあるから、ただぼーっと見ているわけにもいかない。そもそも、Edenを前にして上の空なんてもったいないことはできないけど。

「きみって、本当にぼくたちのファンなの?」

「……え?」

巴先輩は1曲踊り終えると、突然そんなことを聞いてきた。思わず聞き返すと、巴先輩はずんずんと近づいてくる。足が長いから迫り来るのも速い。

「こんなに近くで、目の前で、このぼくがきみのためにパフォーマンスをしているのに、あんまりにも無反応だったからね」

拗ねたような口ぶりだった。

「そりゃもちろんファンですけど、今は一応プロデューサーとして来てるわけですから」

「きみはいつからEdenのプロデューサーになったのかね?」

「あ……いや、それは……」

そんなつもりで言ったわけではなかったんだけど、確かに巴先輩の言う通りだった。夢ノ咲ではプロデューサーだが、玲明学園では私はただの生徒に過ぎない。

思い上がったことを言ってしまった、と少し焦る。でもこのまま黙っているわけにもいかない。

ばつが悪くて一度逸らしてしまった視線を戻すと、巴先輩は何故かにっこり笑っていた。

「ふふ、いじわるを言ってごめんね。きみが良い反応をするって聞いていたから、試してみたくなっちゃった。だから、恨むならぼくじゃなくて、あの毒蛇を恨むといいね☆」

「は? えっ……な、何を聞いたんです!?」

「うん? 何って、きみのことはすべて聞いているね。ぼくたちのプロデュースに関わるんだから、当然だね。得体の知れない人には任せられないからね」

言ってることはわかるけど、具体的なことが何ひとつわからない。

毒蛇ーー七種先輩には、玲明入学後すぐに色々なことを叩き込まれた。そのときの話を聞いたということなのか、それとも。

「そうそう、きみはいつもぼくのことを"巴先輩"と呼ぶけれど、別にいつも通りに・・・・・・呼んでくれて構わないね」

そう言って楽しそうに笑う巴先輩ーーいや、日和様は、ありし日の七種先輩のようなまぶしい笑顔を見せていた。

「ぼくの名前、呼べるよね?」

*****

「ユリちゃんはいい子だね」

「……あの、いい加減降りていいですか、日和様」

「うんうん、だめに決まってるね♪」

私は一周回って冷静になっていた。

あれよあれよと物理的に振り回されているうちに、椅子に座った日和様の上に、向かい合わせに座らされていた。意味不明だ。

「きみは毒蛇とばかり会っているようだから、誰のものなのか自覚してもらわないとね」

「いや、七種先輩とは仕事で会ってるってだけでーー」

「"七種先輩"?」

「……い、茨くん、とは、仕事で会ってるだけですから! ていうか、いつから私は日和様のものになったんですかねぇ……!?」

「きみと最初に会ったとき、言ったはずだね?」

「言ってねぇですよ!」

「あっ! そういう言葉遣いはよくないね! ジュンくんみたい!」

ぷいっとそっぽを向いた日和様は、すぐにいたずらを思いついたような顔でこちらを向いた。

と同時に、両手でウエストを掴まれて、そのままーー思いっきりくすぐられた。

「うひゃあっ!? ちょっと待っ、あっ、ふふっ、くすぐったいですって! ひぃっ、やめて、やめ、あっ、んっ、ふっ、ははっ!」

私が息も絶え絶えになっていると、いつの間にかくすぐるのをやめていた日和様がじっとこちらを見ているのに気づく。

「はぁ、はぁ……あの……今、あんまり見ないでほしいんですけど……無様なんで……」

「うんうん、無様なところもかわいらしいから、安心していいね」

私の人権は?

「でも、きみにひとつ謝らなくちゃいけないことがあるね」

「はい? ひとつ? もっとあるでしょ……」

「それはきみの態度次第だね。ーー悪いのだけれど、とりあえず今はこれ・・をどうにかしてほしいね」

私の手を取った日和様は、躊躇いもなく自身の下腹部に触れさせた。

「は?」

下腹部というか、アレだ。この硬い棒状のものは、もしかしなくても、日和様の。

「……うぎゃあ!! なんつーモン触らせてんですか!!」

「失礼だね!?」

咄嗟に手を離そうとはしたものの、日和様の力に勝てずそのままだった。しかもそこを撫でるように手を動かされている。

「いや、どういうつもりなんですかあんた!?」

「ぼくの上で身悶えるきみの姿を見て、興奮しない理由がないよね?」

「自業自得でしょうが……!」

なんなんだこの人。どうにかしてほしいって、一体何をどうさせるつもりなんだ。

「あの……」

「なあに?」

必要以上に甘い声で返事をされて、一瞬たじろぐ。

「私は、その、どうすれば……?」

日和様がどこまで求めているのかを確認しようとすると、キョトンとした表情のあと、すぐにまたにこりと笑顔になった。

「ふふ、ぼくが教えてあげようね♪」

あっ、だめだ。これ完全に誤解されてる。

*****

「大丈夫、いきなり挿入はしないからね」

「段階を踏めばいいってことじゃないですからね!? てかソレしまってください! 見てられない!」

「本当に失礼だね……。それに、おかしなことを言うね。これをしまったらエッチができないよ?」

「だからしないんですってば」

「きみに逆らう権利はないね。うるさいお口は塞いでしまおうね♪」

「少女漫画か――!」

ツッコんでるうちに本当に口を塞がれた。手で、とかいうオチはなく、普通にキスだ。嘘でしょ。

抗議しようと口を開くとすかさず舌が入り込んできて、息が上手くできなくなる。

「ユリちゃん、こういうことは初めてなんだね」

なんだか嬉しそうに笑っている日和様だが、茨くんといいこの人といい、もしかしてEdenはサディストの集まりか何かなんだろうか。せめて凪砂様とジュンくんはまともであってほしい。ジュンくんは多分まともだろうけど。

「この状況で考え事なんて、案外余裕があるみたいだね?」

「いや、どっちかっつーと、キャパオーバーで放心してるだけです……」

「なら、ゆっくりしてあげようね。ぼくは優しいから、それくらいの気遣いはできるね」

「もうツッコむのも疲れましたよ」

日和様は相変わらずにこにこと笑っている。そして容赦なく爆弾を落としてきた。

「あ、そうだ。このあとジュンくんも来る予定だから、あの子の相手もしてあげてほしいね」

「……え?」

「大丈夫、ジュンくんはきみと同じで経験なんてないから、一緒にがんばればいいね♪」

「いや、えっ、ジュンくんって童て――じゃなくて、ちょっと待ってくださいよ!?」

――ジュンくんに女性経験がないという情報にちょっと安心してしまった。だってファンだから。

それはそれとして、日和様の言うことをまとめると、そのジュンくんの初めての相手に私をあてがおうとしてるってことだ。なのに私の初めての相手は日和様になろうとしている。横暴とかいうレベルじゃない。

「ジュンくんが来る前に、ぼくと練習しておこうね」

「まままま待ってください! 私だって初めてはジュンくんがいいです――じゃない! そうじゃなくて! てか、ジュンくんだって嫌でしょう!」

「さっきからちょくちょく本音が漏れてるね」

口を尖らせた日和様は、軽くため息を吐いて、私の制服のボタンをはずし始めた。

「いや、なにやってんですか」

「どうせ脱ぐんだし、今でもいいでしょ?」

「会話する気あります?」

「してあげてもいいけど、きみの意見を通す義理はないね」

「でしょうね……」

「抵抗しないの?」

「しても無駄でしょう、もう。それに、見られて恥ずかしい体はしてないつもりなんで」

「へえ。それは楽しみだね……♪」

「日和様はもうちょっと恥ずかしがった方がいいと思いますけど……下、丸出しじゃないですか」

「見られて恥ずかしいモノじゃないからね」

あの日和様が下ネタ言った……。ファンとしては複雑だ。

「というか、現実的な話、そんなサイズのモノ、入らないと思うんですけど……」

「そんなことないね。慣らせば大丈夫。僕が全部してあげるから、きみは寝転がっていればいいね」

日和様はそう言って、椅子から立ち上がった。そして床に自分のジャージの上着を敷いて、私をその上に寝るよう促す。とりあえずジャージを踏まないように座った。

「えぇ〜……ほんとにヤるんですかぁ……?」

「こらっ、はしたない言い方はやめてほしいね!」

制服のシャツの前を開けられただけだから、まだこちらのダメージは少ない。今なら引き返せないだろうか。

日和様を見上げると、すでに練習着のTシャツを脱いでいる。

「うわぁっ、何脱いでるんですか!」

「きみも脱ぐんだよ? はい、ばんざ〜い⭐︎」

シャツとキャミソールも取り上げられて、上はブラ1枚になってしまった。

「……ジュンくんの色だね」

「え? ああ、いや、たまたま青なだけですけど」

私のブラを見て不満げな表情になった日和様。どうやらネイビーのブラをつけていたのが気に食わないらしい。別にジュンくんのメンカラを意識して買ったわけじゃないんだけど……。

「もう取っちゃおうね」

「うう〜……」

見られて恥ずかしくない体だとは言ったけど、やっぱり下着を脱がされるのは普通に恥ずかしかった。

「お顔が真っ赤でかわいいね」

「観察するのやめてくださいよ〜……」

「ふふ、すごくきれいだね。本業に戻ったら、モデルをやると良いね」

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