C-3
「ユリちゃん、先日はサマーライブのプロデュースお疲れ様」
「はあ、どうも」
突然だが生徒会室である。
会長――天祥院英智先輩がなんともいえない笑顔でこちらを見ていた。
「それで、手ごたえはどうだったかな?」
「あー……まあ失敗ですね。Trickstarのプロデュースが初めてだったって先に言い訳しておきますけど、先輩方の力を過信してました」
「過信? 君は、今のTricstarがEveと対等にやり合えると思っていたんだ?」
ここで頷いちゃうとかなり私が見る目のない無能だと思われてしまうけど。
「……なんてね。ついいじわるを言いたくなってしまったよ」
「え、今のいじわるだったんすか?」
「うん? そうか、君にはこのくらいなんてことないんだね」
「まあ、よくわかんないっすけど、結果オーライじゃないですか? Eveに使われて先輩たちも実力を把握できただろうし」
なんてテキトーこいてたら先輩は急に笑い出した。怖っ、何?
「これは仮説なんだけれど、君は最初からそのつもりで、あえてTrickstarの手助けをしなかったんじゃないのかい?」
「まあ、否定はできませんね。だって先輩ら、"Edenはヤバいけど片割れのEveだけなら大丈夫!"みたいな雰囲気だったんです。そういうの、私みたいなアイドルでもない後輩に指摘されて素直に頷けますかね、男の子だし」
「ふふ、それが君の本性か」
「嫌味っぽいのは自覚してますよ」
「いや、けなしているわけじゃないんだ。そういうことをはっきり指摘してくれる存在は貴重だからね。ぜひ今後とも
「もちろんです」
やめるやめないはこっちで選べるもんでもないですしね。
玲明から帰って来いと言われるまではこっちにいなきゃいけないし、というのは言わない約束だ。そこの采配は実質茨先輩が仕切っている。
「その言葉が聞けて良かったよ。さて、本題に入ろうか」
「え、今のは?」
「世間話だけど」
「天祥院先輩の世間、殺伐としすぎじゃないですか?」
「ふふ、そうかもね。それと、気軽に英智って呼んでよ。僕はユリちゃんって呼んでるのに、寂しいじゃないか」
「はあ、わかりました。それで、本題って何です?」
「つれないね。まぁいいや。――君にモデルの仕事をしないかって依頼がきてるんだ」
「私に? 確かに昔キッズモデルはやってましたけど、もうやめたのに今更ですね」
「先月、Knightsの撮影に同行したそうだね。そのときの担当者の目に留まったみたいで、何回か打診されていたんだよ。やってみる気はあるかい?」
「ていうか、プロデューサーがそんなことしていいんですか? 制度的に」
「本来なら断っているところだけどね。またKnightsの特集を組んでくれるというし、君はその撮影のいわゆる"相手役"で指名されているんだ」
「あ〜……じゃあ"お姫様"ってことっすか……」
「そうなるね。似合うと思うよ」
「馬鹿にしてますよねぇ……。わかりました、Knightsの仕事になるならやります」
「君ならそう言ってくれると思ったよ。そういうことだから、今からKnightsと打ち合わせをしてきてくれるかい?」
「もう引き受けてたんすね……!? 後から行くと瀬名先輩がめんどくさいから先に言ってほしかったです」
それじゃ、と言って生徒会室を後にした。あとは猛ダッシュだ。