A 雨取
【雨取視点】
今日も人気のない神社に一人でいた。
何かをするわけでもなくしばらく座っていると、不意に誰かの足音が聞こえてくる。
ここにお参りにくる人なんて今まで1度も見たことがなかったのに……。
ここにいない方がいいかなと思って鞄を持って立ち上がると、ちょうど階段を上ってきた女の人と目が合った。
「あ……こんにちは〜」
その人はにこりと笑って挨拶をしてくる。
「こ、こんにちは」
わたしも返事をすると、その人はわたしの方に近づいてきた。
「中学生〜?」
「あ……はい。中学2年生です」
思ったより小柄だったその人はそのまま雑談を始めた。
「そうなんだ。わたしも2年生、大学の」
「えっ、大学生なんですか?」
「? うん」
「ごめんなさい! 高校生かと思って……」
「あは、いいよ〜。わたし出水杏子、よろしく」
「雨取千佳です。よろしくお願いします」
礼儀正しい〜と言いながら、出水さんはわたしの頭を撫でる。
「あの、出水さんはどうしてここに?」
「待ち合わせに早く着きすぎちゃいそうだったから、時間潰そうと思って。――あ、わたし弟いるの、だから名前で呼んで?」
わたしもこの後修くんに呼ばれている。ここに来た理由が同じだったことに少し驚いた。
「あ、はい、杏子さん。えっと、じゃあ、わたしのことも名前で……」
「千佳ちゃん、妹みたい〜。うちの子になる?」
わたしは返事をしようとしたけれど、それは叶わなかった。
……来る。
そう感じて、とっさに階段を駆け下りた。一緒にいたら杏子さんを巻き込んでしまうかもしれない。
「待って、千佳ちゃん〜!」
「杏子さん!? お、追いかけてこないでください!」
「かばん忘れてる!」
「えっ、あっ、だ、大丈夫です!」
「えっ、どういうこと〜?」
必死に杏子さんから離れようと走っていたのに、わたしのすぐ後ろで
「うわっ、バムスター。千佳ちゃんできるだけ離れてて〜」
「でも、杏子さんはーー」
わたしが呼び寄せてしまったのに、かばってもらうことなんてできない。
「ボーダーだから大丈夫」
さっき話していたときと変わらない表情で、杏子さんは一瞬で目の前にいたものを倒してしまった。
「すごい……」
「ありがと〜。B級だけどね」
男の子が着る学ランのような格好に変わっていた杏子さんは、やっぱり笑っていた。