ポッセ@ファミレス

「そういえば帝統、最近お金借りに来ないね? 調子いーの?」

はじまりは乱数のその一言だった。

「言われてみればそうですね。それに心無しか身なりが人間のように……」

「"のよう"ってなんだよ! 俺は人間だっつの」

「帝統はん、わっちというものがありながら、他の女に浮気でありんすか?」

「え〜! 帝統ヒモになったの!? おめでと!」

「ちげーよ。めんどくせえなお前ら……」

「ねえねえ帝統の飼い主はどんなオネーさんなの? 僕にも紹介してホシイナー!」

「おや、それについては小生も興味がありますねぇ」

「だからヒモじゃねえ!」

むすっとした表情になる帝統を見て、乱数と幻太郎は顔を見合わせた。

「オネーさんじゃないなら、ホントにギャンブルの調子がいいってこと?」

「貴方、ついに臓器売りましたか」

「ふん、お前らちょっと、俺をバカにしすぎじゃねーの?」

そう言い返した帝統の表情は不機嫌そうなものから一変し得意げだ。

「彼女ができたんだよ」

「「は?」」

ドヤ顔で言った直後、真顔で"は?"などと言われた帝統は不思議そうに首を傾げる。

「あれっ? お前ら驚かねーのか?」

「いや、だからそれヒモじゃん」

乱数の声はいつもより数段低く、シラけた表情を帝統に向けた。

「帝統……まさか本当に女性にタカっていたとは」

「ちがっ、タカってねえ! 向こうがくれんだよ! マジ付き合ってんだって! あっ何で目ェ逸らすんだよ、おい! ちょっと!」

「えー、だって帝統みたいな将来性のない男と付き合いたいなんてコいる?」

「Fling Posseのファンだというのならあり得なくはないですが、長くは続かないでしょうねぇ」

「お前ら……!」

2人を驚かせてやろうと思っていた帝統は悔しげに唸るが、ハッと思い出したようにスマホを操作し始める。

「これなら信じてくれるだろ?」

帝統はそう言って画面に映し出された写真を見せた。

女装姿ではない亜璃澄の自撮りだが、隣に帝統も写っている。その時のノリでなんとなく撮ったものだったが、どこからどう見ても恋人同士の仲睦まじい写真だ。

「へえ。写真ってこれだけなの? かわいいオネーさんの写真、もっと見たいなー」

乱数はさっきまでとはうって変わり、興味津々といった様子で帝統にそう聞く。

好感触を得られた帝統は嬉々として他の写真を見せようとするが、その手は幻太郎によって止められた。

「…………それ、西御門さんじゃないですか?」

「あれっ、幻太郎も知り合い?」

「ええ、ご近所さんですよ。しかし彼、小生のことを"有栖川帝統"だと思っているはずなんですが……」

珍しく嘘をつくこともなくそう答えた幻太郎。それを聞いた乱数は意地の悪い笑顔を浮かべ、帝統はポカンとしていた。

「お前また俺の名前勝手に名乗ってんのかよ」

「いや、どうせすぐバレるだろうと思ったんですけどね。というか、帝統とそういう関係である以上もうバレてるんでしょうけど、昨日も小生を"アリスちゃん"と呼んできたんですよね彼。え、こわ……」

「あはっ、幻太郎キャラブレてる! おもしろ〜い!」

「何が"おもしろ〜い!"だよ……。そういや亜璃澄ん家、幻太郎ん家の近くだったな。俺も最近はあいつんとこ泊まってるけど、あの辺で幻太郎に会ったことねえな」

「ていうかさ、幻太郎さっきからこの子のこと"彼"って言ってるけど、オネーさんじゃないって知ってたの?」

「ええ、小生の知っている西御門さんであれば、男性ですよ。外見はこの通りかわいらしいですが……」

「え、じゃあ帝統って……」

「? ……お、俺はそういうんじゃねぇー!」

乱数と幻太郎の生暖かい視線を浴びて言わんとしていることを察した帝統は慌てて否定した。

「でもこの西御門くんは男の子なんでしょ?」

「そうだけどよ、いや、あいつ初めて会ったときは女装してたんだよ。服脱ぐまでわかんなかったつーか……」

帝統は亜璃澄との馴れ初めをざっくりと話した。

話を聞き終えた幻太郎はどことなくげっそりとしている。

「どうしたのげんたろ〜? げんなりしてるね、げんなり太郎になるの?」

「いえ……小生、ちょっと西御門さんのことを勘違いしていたようで」

「あっ、もしかして幻太郎も亜璃澄くんのこと好きだったの? 帝統に取られちゃったね!」

「そういうんじゃないです」

「つか亜璃澄のこと勘違いってなんだよ?」

不思議そうに首を傾げる帝統を見て、幻太郎は諦めたように軽く溜息を吐いた。

「小生は西御門さんのことをとても真面目でお人好しな方だと認識していたもので。まさか帝統のようなギャンブラーで女装癖で露出狂でヤリチンでド淫乱でクソビッチだったとは……露程も想像していませんでした」

「おい! 誰もそこまで言ってねえだろ!?」

「あ、予想が外れて悔しい的な感じか〜」

「まあそんな感じです」

「好き勝手言いやがって……。けどま、人は見かけによらねーよなぁ」

なんて結論づけていたところで、いつの間にかスマホをいじっていた乱数が"うわっ"という嫌そうな声を上げた。

「ボク、やっぱり亜璃澄くんのこときらーい!」

「はぁ? 何だよ急に」

乱数による突然の嫌い発言についむっとする帝統。

「だって、これ見てよ!」

押し付けられたスマホの画面を幻太郎と帝統は覗き込んだ。

『シンジュク中央病院』

その公式HP内の職員紹介ページに、亜璃澄の写真が載っている。

「…………あいつ医者なのか?」

「帝統、貴方まさか知らなかったんですか? まあ小生は知ってましたけど」

「げんたろ何でマウント取ってんの? ――っていうか亜璃澄くん、寂雷のジジイと仲良いんだって! あり得ない!」

「ああ、シンジュク代表のリーダーですか」

「仲良かったのか? そいつの話、亜璃澄からあんま聞いたことねえけど」

「そうなの? うーん、でもなぁ〜」

乱数は口をとがらせて拗ねた。

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