人命救助A
【帝統視点】
真夏の昼下がりの公園で、俺はついに死を覚悟していた。
もう3日も何も食べていない。公園の水は飲んだけど、腹は全く膨れなかった。
もう賭ける金も物もねえし、乱数や幻太郎のとこに行く体力もねえ。
残るはパンツと身体と命だけ、このギリギリな状況もアリだけど、せめて飯が食いてえ……!
とりあえずベンチから下りようとしたら思ったように身体が動かずそのまま地面に落ちた。いってえ。
あちーしだりーし、うつ伏せのまま転がっていたら、近くに人の気配を感じた。
身体を横向きにされたと思ったら、直射日光のあの焼かれる感じがなくなる。
何か声が聞こえるけど、ぼーっとしてよくわかんねえ。返事しようとしたけどそれもだるい。
そのままぐだぐだしてたら、不意に何かが口元に当てられた。
「!」
俺は反射的にその何かを掴んで身を起こした。握ったものが何だか認識しないうちにそれを口に流し込む。スポーツドリンクの味だ。
う、うめえ……! 死にかけで飲むスポドリ、やべえ……!
「ぷはっ……助かった……!」
もうろうとしていた意識がはっきりしてきて、やっと目の前の人間の存在に気付く。
日傘を俺の方に傾けて、しゃがんだまま心配そうに様子を伺うギャルっぽい女だった。どうやらこいつが助けてくれたらしい。
慌ててたのか抜けてんのかどっちかわからないが、しゃがんだそいつのパンツが俺には丸見えだ。えっろいのはいてんな。夏らしい露出度の高い格好のおかげで胸の谷間もばっちり。よく見たら顔もかわいいし胸もでけえし、正直ムラムラした。
とはいえ、いきなりこんなところで女に襲い掛かるほど俺は落ちぶれちゃいねえ。けど、とりあえず食いモン持ってないか聞いてみた。
そいつが出してきたのはコンビニのおにぎり。米だ。パンよりだんぜん腹が膨れそうでありがたい。しかも具が唐揚げで最高だ。
飯を前にしたら耐えがたい空腹を急に自覚して、急いでおにぎりを飲み込んだ。
よく噛まなかったせいでむせこんでたら、そいつが横にきて背中をさすってくれた。普通初対面のパンイチの男にそこまでするか? 親切すぎて心配になってくる。
が、そんなことより背中をさするたびに俺の腕にふよふよと当たるそいつの巨乳が気になって仕方がない。なんか良いにおいするし。
指摘してみればそいつは慌てて離れた。見た目の割に男に慣れてねえような反応だった。なんかエロいな、こいつ……。
「なあ、これもなんかの縁だろ? 今日泊めて――とまでは言わねえから、せめて風呂貸してくれ! お願いします!」
頭下げて頼んだら、結構考え込んだあと、了承してもらえた。頼んどいてアレだけど、危機感どうなってんだよ。
*****
今までも公園で転がってたら食いモンをくれる奴はいた。
それは野宿仲間のおっちゃんだったり、通りすがりのじいさんばあさんだったり、たまに若い女もいたけど、家に入れてくれたのはこいつが初めてだ。
来る途中で聞いた名前は"観音坂明歩"。
公園からすぐんとこにあるこいつの家は、一人暮らしっぽかった。
家に上げてもらってすぐ風呂に直行させられた。久々に頭からシャワーを浴びられる幸せを感じつつ、そこに並んでるシャンプーとか色々が"女"って感じでまたムラムラしてきた。やっべ。
1回抜こうかとも思ったけど、家に上げてくれたくらいだし、もしかしたらヤれんじゃねえかとかバカなことを考え出してやっぱやめといた。
テキトーに全身洗ってさっさと脱衣所に出て、その辺にあったタオルを取ろうとしたところで突然ドアが開いた。
これには俺も結構驚いたけど、明歩が持っていたスウェットらしきものをその場に落として逃げて行ったのが見えて逆に冷静になった。見られちまったなあ。見られて困るほど粗末なモンでもないけど。
俺のために用意してくれたんだろう男物のスウェットを着て脱衣所を出ると、明歩は部屋ん中でうろうろしていた。
「……何やってんだ?」
「へっ!? ――あ、いや、なんでもな、ないです!」
俺が声をかけると明歩はめちゃくちゃ驚いて、何故か敬語だ。それに顔が赤い。
「そーか? なあ、この服彼氏の?」
「え、あ、それは前にお兄ちゃんが来たとき置いていったやつだけど、もしかしてサイズ合わなかった?」
「そういうわけじゃねえけど、彼氏いんなら、俺みたいなの上げない方がいいんじゃねえかと思ってさ。ま、今更だけどな」
「ああ、それなら大丈夫……うち彼氏いたことないし」
"お兄ちゃん"ね。それに彼氏もいないのか。こいつ、見た目はギャルだが中身は結構大人しそうだ。
「お前、その見た目で意外と遊んでねーのな」
思ったことをそのまま言ってみれば、明歩は困ったように笑った。
「……よく言われる」
「さっきも良いカオしてたぜ」
「っ、蒸し返さないでいーから!」
「かわいいっつってんだって」
明歩は照れたような顔で視線をさまよわせる。それがかわいいんだよな。
「なあ、やっぱ今日泊まってっていいか?」
明歩は断らない。俺はその可能性に賭けた。